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記憶の多重貯蔵庫モデル|感覚記憶・短期記憶・長期記憶を簡単に分かりやすく具体例で解説!

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多重貯蔵庫モデルとは、ひとは知覚した情報の貯蔵先を複数もっているという理論で、またそれぞれ「感覚記憶・短期記憶・長期記憶」とよばれるものです。

本記事では、多重貯蔵庫モデルについて基本的な意味や全体の内容を解説したのち、「感覚記憶・短期記憶・長期記憶」やその他の記憶の種類から、細分化された種類・分類について解説していきます。

 

Contents

記憶の多重貯蔵庫モデルとは

記憶の多重貯蔵庫モデルとは、人間は知覚した情報の保持先として「感覚記憶短期記憶長期記憶」という3つの貯蔵庫と順に進むプロセスがあり、最終的には長期記憶へと記憶していくことを表した理論です。

  • 感覚記憶
    • 目・耳・鼻・皮膚・舌の五感からえた情報で、記憶時間は約0.25秒とされている。
  • 短期記憶
    • 感覚記憶から送られ、記憶時間は約15~30秒とされている。
  • 長期記憶
    • 短期記憶から送られ、ほぼ半永久的に記憶される。

記憶モデルは、1968年に「アトキンソン(Atkinson)」と「シフリン(Shiffrin)」という2人の学者によって提唱された理論がもとになっています。

この2人の学者によって提唱されたもと(始め)の理論は、短期記憶・長期記憶の2つで「記憶の二重貯蔵庫モデル」とよばれていました。

そのご研究が進むにつれ「感覚記憶」というものが発見され、現在では「記憶の多重貯蔵庫モデル」へと発展していったとされています。

 

「記憶の多重貯蔵庫モデル」の主な流れは?

人間が物事を記憶するさい、上記で紹介した3つの手順を踏むとされています。

ここでは、それぞれ「感覚記憶短期記憶長期記憶」について説明する前に、それらが進んでいく順序(記憶のメカニズムについて)を簡単に解説します。

STEP
感覚記憶

人の記憶はまず、知覚したものを感覚記憶という貯蔵庫へ移します。

感覚とは「目・耳・鼻・舌・皮膚」の五感をさし、これらの感覚器官で見たり、聞いたり、嗅いだり、味をしたり、触れたりすることにより約0.25秒のあいだ記憶し、自分に必要であるか?重要であるか?といった「注意の大小」により情報を取捨選択します。

 

STEP
短期記憶

感覚記憶で注意が大きい情報は、短期記憶という貯蔵庫へ移されます。

短期記憶とはその名の通り、短期的な記憶の貯蔵庫という意味であり、その記憶が貯蔵される時間は約15~30秒だとされています。

人間は、情報をすぐに覚えることができない場合や重要だと感じれない場合は、この段階で消されてしまうため、リハーサルと呼ばれる反復行為や関連する情報どおしをつないで消されないようにします。

 

STEP
長期記憶

短期記憶でリハーサルが行われた情報は、長期記憶という貯蔵庫へ移されます。

長期記憶とは、ほぼ半永久的に記憶しておける貯蔵庫で、皆さんがいう記憶の概念はこの長期記憶をさします。

後に解説しますが、長期記憶には「宣言的記憶・非宣言的記憶」があり、また宣言的記憶には「エピソード記憶・意味記憶」に分けられ、非宣言的記憶には「手続き記憶」というものに分類されます。

 

  • 宣言的記憶
    • 意味記憶
    • エピソード記憶
  • 非宣言的記憶
    • 手続き記憶

 

さらに、長期記憶の分類には「回想記憶・展望記憶」と区別され、回想記憶は「エピソード記憶・意味記憶・手続き記憶」に分けられ、展望記憶は「未来の計画」というものに分類されます。

 

  • 回想記憶
    • 意味記憶
    • エピソード記憶
    • 手続き記憶
  • 展望記憶
    • 未来の計画

※「宣言的記憶・非宣言的記憶・意味記憶・エピソード記憶・手続き記憶・回想記憶・展望記憶・未来の計画」については『見出し:長期記憶』にて解説しています。

 

 

 

 

感覚記憶

  1. 視覚
    • 目で見て情報を得る。
  2. 聴覚
    • 耳で聞いて情報を得る。
  3. 嗅覚
    • 鼻で匂いを嗅いで情報を得る。
  4. 味覚
    • 舌で味を感じて情報を得る。
  5. 触覚
    • 手で触ったり、肌に触れて情報を得る。

 

感覚記憶とは、これら5つの感覚器官(五感)で情報を得て、約0.25秒のあいだ記憶できる貯蔵庫という意味です。

じつは、我々が日常的に受けとっている情報はとても多いです。たとえば、普通の生活を例にだすと以下のようになります。

つねに「目・耳・鼻・舌・皮膚」などから、人々の行動を目撃し続け、発せられた音を聞き続け、物質や空間の匂いを嗅ぎ続け、食べ物や空気の微量な味を感じ続け、風や温度を感じ取り続ける。

このように、意識しないとなかなか気づくことができませんが「私たちはつねに膨大な量の情報に晒された状態」にあります。しかし、それら1つ1つを重要か否か?必要か否か?と取捨選択している時間も余裕もエネルギーもありません。

ですから、一旦はすべての情報を感覚記憶へ貯蔵し、注意(興味・関心・重要)が向けられたものを短期記憶へ貯蔵するという仕組み(感覚記憶)があるわけなんですね。

 

 

 

短期記憶

短期記憶とは、感覚記憶で注意・意識が向けられた情報を約15~30秒のあいだ記憶できる貯蔵庫という意味です。

短期記憶は、注意の向けられた情報が15~30秒のあいだ記憶されるといっても、注意を向けた情報すべてを保持できるわけであはりませんし、もちろん短期記憶として保持された情報のすべてを長期記憶へ貯蔵できるわけでもありません。

つまり、短期記憶にもある程度の容量(人によって異なるメモリ)が存在しており、また短期記憶へ移行できた情報も、すべて長期記憶へ移行できるわけではないということです。

またこれまでの歴史の中で「短期記憶がどのようなものなのか?」を理解するために様々な実験がおこなわれてきました。その中でも有名な実証実験を下記でご紹介します。

 

マジカルナンバー7プラスマイナス±2チャンク

短期記憶が「どのようなものなのか?」をわかりやすく証明した実験でもっとも有名とされているのが「マジカルナンバー7プラスマイナス±2チャンク」というものです。以下では、わかりやすく要約しながら解説しました。

実験内容

成人を対象に以下の実験を行った。

  1. 意味ない羅列した数字を記憶させる
  2. 記憶してすぐに数字を暗唱してもらう

結果:最多で9桁、最小で5桁、人間は平均して7桁の数字が復唱(一時的に記憶)できることが明らかとなった。

 

~短期記憶の実験まとめ~

  • 記憶時間:15~30秒
  • 記憶容量:7個 ± 2個
チャンクとは

多重貯蔵庫モデルを学んでいると「7±2チャンク」で記載されることがあります。

このチャンクとは「情報のかたまり・まとまり」を意味する認知心理学用語の1つで、ジョージ・ミラー(George A. Miller)氏によって提唱された概念とされています。

例:車という概念を知覚する場合、ひらがなだと3チャンク、漢字や単語として知覚する場合は1チャンクと、まとまりごとに表現する意味である。

このように、人間が数字のような簡単なものを記憶しようとした場合、一度に覚えられる量は平均して7桁、最小で5桁、最多で9桁というように少なく、また記憶した数字は約15~30秒で忘却していきます。

しかし一方で、長期記憶へ転送される情報も存在します。このように長期記憶へ転送される現象は、一貫して「リハーサル(符号化)」と呼ばれており、この意味は反復行為だとされています。

また、リハーサルには大きく分けて「維持リハーサル」と「精緻化(せいちか)リハーサル」の2種類があります。

 

リハーサル(符号化)

リハーサル(符号化)とは、意識的か無意識的かに関わらず、短期記憶に貯蔵された情報を物理的・思考的な反復によって、何度も想起することで長期記憶へ転送する行為をさします。

リハーサル(符号化)の種類
  • 維持リハーサル
  • 精緻化リハーサル

 

維持リハーサル

維持リハーサルとは、短期記憶で得た情報の反復を繰り返す(維持期間を長く作る)ことで忘却を防ぎ、長期記憶へ転送されるリハーサルのパターンをさします。

例えば、学校での宿題で「漢字を覚えるために何度も書き殴る行為」や「掛け算九九を何度も復唱する行為」が、維持リハーサルに該当します。

 

精緻化(せいちか)リハーサル

精緻化(せいちか)リハーサルとは、すでに知っている他の情報・知識との結びつけ・組み合わせ・関連性をもたせて一連の流れとしてイメージをもつリハーサルをさします。

例えば、「野菜・鍋・包丁・まな板」を記憶しようとした場合、野菜をまな板に乗せて包丁で切り、鍋で煮込むことで野菜スープ(料理)ができるといったように、関連性やエピソードとして一連の流れをもたせることで記憶する場合に該当します。

 

 

 

長期記憶

長期記憶とは、短期記憶からリハーサルによって送られる保管場所で、ほぼ半永久的に記憶される貯蔵庫という意味です。

長期記憶で可能な作業
  1. 記銘
    • リハーサル
    • 記憶する行為
  2. 貯蔵
    • 記憶の保管・保持
    • 出来事を覚えておくこと
  3. 想起
    • 記憶の取り出し
    • 記憶を思い出すこと

長期記憶に貯蔵されると、記憶の操作が可能になる。

例えば、情報の検索や整理といったことから、その中で考えアイディアを生み出すことなどに該当します。

長期記憶の「種類・分類」
  1. 宣言的記憶
    • 意味記憶
    • エピソード記憶(自伝的記憶)
  2. 非宣言的記憶
    • 手続き記憶
  3. 回想記憶
    • 過去に起因する記憶
    • 1:意味記憶
      2:エピソード記憶
      3:手続き記憶
    • 上記3つが回想記憶に該当する
  4. 展望記憶
    • 未来の予定や計画の記憶
    • いずれも該当しない

1:宣言的記憶などの自分の意思で想起できる記憶を「顕在記憶」と呼ぶ。

2:非宣言的記憶などの無意識で想起してしまったり、意識せずとも記憶しているものを「潜在記憶」と呼ぶ。

3:宣言的記憶・非宣言的記憶のように、過去の事柄から起因(現在の事象や出来事を説明)できるようなものを「回想記憶」と呼ぶ。

4:明日の予定や将来の計画といった、まだ起こっていないことをイメージすることを「展望記憶」と呼ぶ。

 

 

宣言的記憶

宣言的記憶とは、言葉や言語を使ってイメージ・表現できる記憶と分類され、想起を伴う特徴があり、これを「顕在記憶」と呼ぶ。また宣言的記憶には「意味記憶・エピソード記憶」が存在する。

 

意味記憶

意味記憶とは、辞書などのように、対象の物や概念に対する意味を「保持する記憶」をさします。

例えば、ノートパソコンってなに?と聞かれれば「ノートのように折りたためて、モニターやキーボードやタッチパネルが一体化したコンピューター」というように、その物がどんなものであるかを把握していますよね。

このような、対象のモノへであったり、概念といった言葉の意味を記憶していることが「意味記憶」に該当します。

 

エピソード記憶

エピソード記憶とは、過去の事象や出来事といった、意味を含めた一連の流れを「保持する記憶」をさします。

例えば、昨日は休日だったため「朝ゆっくり起きて散歩に行き、ご飯を食べてからゲームをして、夜は買い物に行って早めに寝た」というような出来事や事象の一連に関する(カギカッコ内の)記憶を「エピソード記憶」とよびます。

 

【要注意】自伝的記憶(エピソード記憶)

自伝的記憶とは、エピソード記憶(過去の体験)の概念に含まれるもので、人生に重要な事柄や自己同一性(アイデンティティ)に大きく関わり、強い感情が伴う記憶をさします。また自伝的記憶は、エピソード記憶とは違い、明確に区別されます。

「エピソード記憶」と「自伝的記憶」の違い
  • エピソード記憶:一連の事象の記憶
    • 例:今朝は〇〇を食べて、学校へ行き、部活をして帰ってきた。
  • 自伝的記憶:人生や自己に関わる。強い感情が伴う。
    • 例:中学の頃に出会った恩師のおかげで、今の自分がいるため指導の道を選んだ。

このように、自伝的記憶はエピソード記憶のような「単なる過去にあった記憶」とは異なり、人生にとって重要な強い感情を伴う記憶に分類されます。とはいえ、区別はされるものの、エピソード記憶の中にある記憶の種類として自伝的記憶に分類されるため、エピソード記憶の一種といえます。

自伝的記憶を紹介させてもらった理由は、私生活でのトラブル要因になりかねないからです。

ご紹介したように、自伝的記憶とは強い感情が伴うもの。よって、私たちがコミュニケーション間で話す内容(過去のエピソードや話したい事)の多くは、自伝的記憶である可能性、またはその要素が強いと考えられます。

しかし一方で、自伝的記憶は一般的なエピソード記憶とは異なって強い感情が伴うため、理想や正当性や欲といったものが記憶と混同されやすい性質をもっており、理想化や正当化はもちろん、場合によっては他の記憶と混じることや、記憶そのものが間違ったものに書き換えられることもあるのです。

そのため、自伝的記憶を話すさいには、タイミングや時期によって「その人独自の意味づけ」がされやすくなり、時間の経過によっても事実とは異なるものへ変わっていくことが多くあります。

その最たる日常的な例が以下のものです。

自伝的記憶の例:偽りの出来事
1:内容

過去の出来事を話すさい、実際には別の人物が述べた内容を、自分が述べたと言ったり、思い込んでいたりすること。

2:実例

職場で話していたら、以前相談にのってあげた悩みの話題になった。すると同僚がしたはずのアドバイスを、まるで自分から発案し、言っていたかのような記憶に書き変わっていた。なんかモヤモヤしたけど、気にせずとりあえず話を終わらせたが、後になってやっぱり気分が良くない。。。

3:まとめ

このように、感情が強めにでる内容の会話をしているさい、別の人物が話していたことを、まるで「自分が言った・そう考えていた」と思い込んでしまう、言い切ってしまう現象などが、自伝的記憶に当てはまります。

また、このような事例を見てわかるとおり、多くの人は気づかずにそれをやってしまいますし、事実との異なりがあると知っている側からすると不愉快に思い、モヤモヤしてしまいます。もちろん、1回や2回は誰にでも生じます。しかし、何度もあるとなると相手にストレスを貯めてしまうため、記憶の取り扱いにはもう少し、注意が必要かもしれません。

 

 

非宣言的記憶

非宣言的記憶とは、言葉や言語ではイメージ・表現できない記憶と分類されるもので、運動・動作などの無意識で行える体の動きなどがこれらに該当され、想起はほとんど伴わない特徴があり、これを「潜在記憶」と呼ぶ。また非宣言的記憶には「手続き記憶」が該当します。

手続き記憶

手続き記憶とは、ダンスや自転車の乗り方などのような無意識的に「運動・動作」可能な記憶をさします。

例えば、長くやっているスポーツでの「体の動かし方」といったものが手続き記憶に該当します。

 

 

回想記憶

回想記憶とは、回想できる記憶という意味で分類されたもので、過去の記憶(事象や事柄・出来事)をさかのぼって説明可能なものであるため「意味記憶・エピソード記憶・手続き記憶」に該当します。

例えば、勉強した感じの意味を思い出すこと(意味記憶)や、過去の思い出を友人たちと話すこと(エピソード記憶)や、部活で練習したことを試合で活かすこと(手続き記憶)が、この回想記憶(過去に起因する分類)に該当します。

 

 

展望記憶

展望記憶とは、実際には起きていない出来事や事象を「計画・予定・想像」し、将来や未来をイメージする記憶という意味です。

例えば、明日は晴れる予定だから「起きたら運動をして、帰ったら少し読書して、朝ごはんを食べてから出かけよう!」というように、未来を創造的に考えていく記憶のことを展望記憶と呼びます。

 

 

 

まとめ

多重貯蔵庫モデルとは、人間は知覚した情報の保持先として「感覚記憶短期記憶長期記憶」という3つの貯蔵庫と順に進むプロセスがあり、最終的には長期記憶へと記憶していくことを表した理論です。

 

  • 感覚記憶
    • 目・耳・鼻・皮膚・舌の五感からえた情報で、記憶時間は約0.25秒とされている。
  • 短期記憶
    • 感覚記憶から送られ、記憶時間は約15~30秒とされている。
  • 長期記憶
    • 短期記憶から送られ、ほぼ半永久的に記憶される。

 

のり

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。

本記事が、読者さんのお役に立てると幸いです。

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