バーナム効果とは、誰にでも当てはまるような内容のことでも「まさに自分のことだ」と思ってしまう心理傾向。
本記事では、そのような間違った認知をしてしまう「バーナム効果」の意味や原因、具体例について紹介していきます。
バーナム効果とは

バーナム効果とは、大半の人に当てはまるような内容の発言や記述でも「ズバリ自分のことだ」と思い込んでしまう心理現象。
例:占いなどで、誰にでも当てはまるような性格や特徴を指摘されると「まさに自分のことだ」と思い込み、信じてしまう現象に該当する。
バーナム効果は「認知心理学」における用語の1つ(認知バイアス(アンコンシャス・バイアス)の一種)で、誰にでも当てはまるようなことを言われると「自分のことを言い当てられた」と思い込み、信じてしまう現象です。
バーナム効果の由来は?
バーナム効果は、19世紀にサーカスで大成功を遂げたフィニアス・テイラー・バーナム氏による発言「We’ve got something for everyone.(和訳:誰にでも当てはまることがある)」が由来となっています。
始まりは、アメリカ心理学者のポール・エバレット・ミール氏が、1956年にエッセイ(Wanted a Good Cook book)にてバーナム効果と述べたのが語源です。
バーナム効果の別名「フォアラー効果」
バーナム効果を初めて提唱した、もしくは有名な実験とよく似た研究をおこなったのは、アメリカ心理学者のバートラム・フォアラー氏だと言われているため、彼の名前をとって「フォア効果・フォアラー効果」と呼ばれることでも有名です。
バーナム効果の実証実験
1948年にバートラム・フォアラー氏は「性格診断」と称して、学生(被験者)約38名に対して次のような実験を行いました。
- 興味・関心を測るテストを受けさせる
- 数日後、大半に当てはまる適当な結果を各々に配布する
- 後日、1(全く違う)〜5(非常に正しい)で評価をしてもらう
- 結果、平均的な評価は「4.26」と各々が非常に高いと評価しました
このようにして、バーナム効果は実証されました。
バーナム効果における「多くの誤解」とは?
バーナム効果は、誤解や間違った認識がされやすい心理現象でもあります。
よくある間違いは「誰にでも当てはまる内容(占いなど)でも、自分にのみ当てはまる話に感じる心理現象」という誤解や認識が多くされます。
しかし、実験で証明できたのは「自分に当てはまると感じる現象」ということであって「自分”だけ”に当てはまる」という勘違いを証明したものではありません。
ですので、正しくは「誰にでも当てはまる内容を提示されると、人は自分にも当てはまることだと感じる」という心理現象がバーナム効果と”定義”できます。
バーナム効果と確証バイアスは同時に働く
確証バイアスとは、自身の仮説を肯定するために、都合の良い情報をだけを集め、それ以外は無意識に避ける心理現象で、認知バイアスの一種です。
バーナム効果は、確証バイアスが同時に働きやすいことでも有名です。また、この2つが同時に働くことで「相乗効果」も生まれ、バーナム効果をより強く強固なものにします。
例えば、占いの仮説によってバーナム効果が働いたとしましょう。そのとき、当事者には「この占いの仮説を信じたい」という気持ちが芽生えやすくなります。
すると当事者は、占い結果を肯定する「都合の良い情報」だけを集めるようになり、そうでない情報は避けるようになる(確証バイアス)に陥るわけです。
このようにして「バーナム効果」と「確証バイアス」が同時に働き、相乗効果が生まれます。また両者は、上記のようなメカニズム(流れで)起きるため、同時に働く事例が多くあるわけです。
バーナム効果が効きやすくなる3つの条件
- 権威性
- 自分ごと
- 肯定的な内容
1. 権威性
権威性とは、免許や資格、肩書きや実績のことを指し、このように実力が証明できるものがある人やメディアに対して、ひとは信じ混みやすくなる心理現象の1つです。
また、バーナム効果が効きやすくなる条件としても「この人が言うなら」という権威性が、大きな効果を及ぼすことも多々あります。
2. 自分ごと
バーナム効果が働きやすくなる条件の2つ目は、「自分ごとである」という点です。
もともと人は、自分のことに興味・関心があるため、「貴方のことですよ」といった言われ方をするとバーナム効果の効果も、より働きやすくなります。
3. 肯定的な内容
人間は、基本的に「信じたいことを信じる」という傾向をもっています。
そのため、肯定的なものや、前向きで否定的でない内容のもののほうが、バーナム効果が働きやすくなります。これは、自分自身のことでイメージしてみると体感的にもわかりやすいでしょう。
例えば「貴方はいま、発揮していない力を有しており、もっと発揮できる場所に行きたい!自分自身を変えたいと思っていますね?」と言われると、「確かにそうかも!」というように感じるのではないでしょうか?
大半の人は、現在の状況に満足できていない人がほとんどです。そのため「力を有している・自分を変えたい」という単語に反応してしまい「信じたい」という気持ちが芽生えやすくなります。
このようなことから「バーナム効果」が生じるというわけです。
バーナム効果が生じる原因は?

- しろうと理論
- 確証バイアス
- 承認欲求
- 抽象的で曖昧な内容
- 当時の心理状態
- 一貫性の原理
- 権威性の原理
- 自分だけという特別感
- 原因のまとめ・本質
1. しろうと理論
しろうと理論(Lay theory)とは、科学的根拠がないにもかかわらず、まるで研究や実験を繰り返しおこなって実証したかのような体系や、物事の捉え方・思い込みを一般人(素人)がすることです。
バーナム効果が生じる原因の1つに、「しろうと理論」も関係していると考えられます。
もちろん「しろうと理論が必ずしも間違っている」というわけではありませんが、確固たる根拠もなければ偏りや情報の欠如・飛躍も生まれるため、断言できるものでもありません。
ですから、このような自分の考え(しろうと理論)が一人歩きしてしまうことで、結果的にバーナム効果を引き起こすことがあります。
2. 人間の脳は“確証を求める生き物”である(確証バイアス)
私たちは、自分の信じたいものだけを選び取り、不都合な事実は自然に見えなくなることがあります。これを「確証バイアス」と呼びますが、バーナム効果はこの典型例といえます。
例えば、曖昧な性格診断文を読むと
- 当てはまる部分 → 強調して記憶する
- 当てはまらない部分 → ノイズとして消える
という反応が起きます。
脳は、矛盾を嫌うため「自分の世界観を守るため」に、一致する情報だけを拾い、齟齬を無視する働きが生まれます。これは、言い換えれば人間は“当たっている理由”を自動的に探しにいってしまう生き物ということになります。
この「確証バイアス」という認知構造だけでも、曖昧な文章が「当たっている気がする理由」は十分に説明できますが、他にもさまざまな作用が働くことでバーナム効果が生じます。
3. 理解されたいという承認欲求が、判断を狂わせる
人は誰しも、自分の中の「弱さ」「痛み」「劣等感」について、どこかで他者に理解されたいと願うものです。とくに、孤独を抱えた時期や、悩みが深いほど、その欲求は強烈になっていきます。
だからこそ、占いや曖昧な言葉が「あなたは繊細で、傷つきやすく、それでも強くあろうとしている」と言えば、私たちは自然と心を開き、敵ではないと判断し、信頼しやすくなってしまいます。
「承認されたい」「理解されたい」「寄り添ってほしい」こうした欲求が満たされる瞬間、人は批判的思考を捨てやすくなってしまいます。ゆえに、“心に寄り添う言葉は、真偽よりも「そう思いたい自分」を強化してしまう”ことで、バーナム効果が強く出やすくなってしまうのです。
4. 曖昧で一般的な文章は、誰にでも“都合よく当てはまる”
バーナム効果の文章は、一見すると個別的に見えることが多いですが、実際は誰にでも当てはまるよう巧妙に設計されています。
例えば
- 「あなたは周囲からどう思われているか不安になる時がある」
- 「あなたは責任感が強い一方で、時に疲れてしまうこともある」
- 「普段は落ち着いているが、内心は葛藤を抱えることがある」
これらは、ほぼすべての人が人生のどこかで経験していることであり、曖昧で抽象的だからこそ、その人自身が自由に解釈し、自分の物語に結びつけることができます。これは言い換えれば、“当てはまる文章”なのではなく、“当てはめる余白”が作られている、といえます。そのため、読者の人生経験を利用して「勝手に当てにいく」構造が効果を強め、バーナム効果が生じます。
5. 感情状態が脳の判断をゆがめる
人は不安なとき、悩んでいるとき、冷静な判断ができなくなります。そのため感情は、理性よりも脳に強い影響を与えるのです。
例えば
- 恋愛で悩んでいる
- 将来に迷いがある
- 孤独を感じている
- 自己嫌悪が強い
- 誰かに頼りたい心理状態
といった状況では、曖昧なメッセージに依存しやすくなり、人は弱っているほど、外部からの“わかってくれる言葉”に救いを求めるのです。結果として、「当たっている気がする」という錯覚はさらに増幅されてしまうことで、バーナム効果が生じます。
6. 自分の物語に“一貫性”を持たせようとする心理
人は、自分の人生をひとつの“物語”として理解しています。例えば「痛み、失敗、恋愛、トラウマ、成功、希望」といった、これらを結びつけて「私のストーリー」を形成しています。つまりバーナム効果の文章は、そのストーリーを補完しやすい構造になっているわけです。
例えば、
「あなたは人から求められる役割と、本当の自分の間で揺れることがある」
この言葉は、自分のどの時期にでも当てはめることができます。それは、学生でも、社会人でも、恋愛でも、家族でもです。ゆえに、こうした言葉をきっかけに、読者自身が「勝手に物語の穴を埋めていく」ため、文章の曖昧さがむしろ説得力を生む構造になっているというわけです。
7. 権威性や雰囲気が「当たっている感」を作り出す
占い師、専門家、占星術、心理診断は「それっぽい雰囲気」や「特別な儀式」は、権威性の錯覚を生みやすくします。さらに心理学では、人は権威に従いやすいことが知られています。
例えば
- 専門用語
- 特別なカード
- 専用のアプリ
- “あなた専用”と強調する言葉
- 落ち着いたトーンの話し方
- 特別なデザインの診断結果
これらは本質的な精度とは関係がありません。しかし、信頼感や説得力を人工的に作り出す力があります。結果として「たぶん正しいんだろう」と脳が思い込んでしまい、バーナム効果が生じます。
8. 自分だけに向けられた“パーソナル感”が錯覚を強める
バーナム効果を最大化する手法のひとつが「これは特別に作った情報です」という演出です。
- あなたの名前を使う
- 「生年月日をもとに」と言う
- 「あなた専用の診断結果です」と表示する
- カウンセリング形式で質問を重ねる
- 個別メッセージのように見せる
これらはすべて「これは私だけのもの」という錯覚を引き起こすための仕組みでもあります。しかし、情報が自分専用だと思ってしまうと、人はその内容に対して批判的になれない傾向にあるため、バーナム効果が生じます。
9. 原因まとめ:バーナム効果が生じる本質
結局のところ、バーナム効果は「思い込み1つの問題」ではありません。
- 承認欲求
- 感情の動揺
- 認知バイアス
- 権威性の錯覚
- 一貫性への欲求
- パーソナル感への弱さ
これらが複数、あるいはすべてが重なって初めて「誰にでも当てはまる言葉」が「私にだけ当てはまる言葉」に変換されます。
重要なのは、人は常に“正確な診断”を求めているのではなく、“自分の物語に意味を与えてくれる言葉”を求めているということです。
バーナム効果は、その欲求に巧妙に寄り添い、その隙間に入り込んでくる、だからこそ私たちは、この心理現象を知り、自分がどういう時に弱くなるのかを理解しておく必要があるわけです。
バーナム効果の事例・具体例は?

- 血液型占い
- 心理テスト
- 広告のコピー
1. 血液型占い
血液型占いを信じる人は、バーナム効果に陥っています。
例えば「A型は几帳面」で「O型は大雑把」など、これらのものが非科学的であると証明されているにもかかわらず、現代においても支持され続けるのには「誰にでも当てはまる特性」を「自分に当てはまる」と思い込んでいるからです。
要するに、A型は「自身の几帳面な姿(一部分のみ)」を切り取っており、またO型も「自身の大雑把な姿(一部分のみ)」を切り取って「当てはまる」と思い込んでいるのです。
しかし、誰にでも「几帳面な一面」や「大雑把な一面」は存在しますし、そういった一面を出すほど興味・関心があるもの、または無いものなどがあるでしょう。
このように、誰にでも当てはまる特性だけで「ズバリ自分に当てはまる」というのが、バーナム効果の一例です。
2. 心理テスト
心理テストが「当たってる!」と感じたとき、バーナム効果が働いています。※臨床(精神科・カウンセリング)などで用いられるのは、研究に基づき効果が証明されている正しいものです。
心理テストにおけるバーナム効果の例は、まさに上記で紹介した実証実験のような状態です。
テストを受けたのち「スバリ、これは自分のことだ」と思い込む現象は、日常で目にすることがあるでしょう。
このように、複雑に見えるようなテストや診断においても、実はバーナム効果が働いているだけということがあります。
3. 広告のコピー
広告のキャッチコピーにも、バーナム効果が応用されています。
例えば「痩せたいけど食べたい。そんな貴方へ!」や「寝ても疲れが取れにくい、そこの貴方!」みたいな感じで話されると、つい「あ、自分のことだ」と思ってしまいますよね。
このように「自分のことだ」という心理状態へ意図的に持っていくことを目的として使われているのが広告コピー(バーナム効果)というわけです。
また、そのようなキャッチコピーは、日常のあらゆる場面(CMや電車、街の看板)でよく見かけますね。
まとめ
バーナム効果とは、誰にでも当てはまる内容でも「まさに自分のことだ」と思い込む心理現象。
そのため、良好なコミュニケーションを築くために使用するなら「権威性・対象の人・肯定的」であることを意識し、陥らないようにするには「情報から、科学的根拠や信憑性の高さを重視」することが大切です。
のりそれでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。
本記事が、読者さんのお役に立てると幸いです。





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