
今回は権威性の法則を解説します。
権威性の法則とは、人間は「専門家に従いやすくなる」という法則的な心理傾向。
本記事では、この心理の意味や原因、日常生活での具体例について解説していきます。
権威性の法則とは
権威性の法則(原理・原則)とは、人間がある物事への「判断・選択・決断」といった何らかの行動をおこすとき、専門家などの権威を感じる相手や事実に対して、無条件に信じて従いやすくなってしまい、疑うことが難しくなる心理現象。
例:医者の出す薬を疑わない。資格もつ者、または難易度の高い業種の者がする言動は「正しい」と感じたり、そう思い込んでしまうこと、または信じること、あるいは従うことに該当する。
このように人は、権威あるものを無条件に信じてして従いやすくなり、疑えなくなってしまうのが「権威性の法則」です。
権威性の法則がはたらく原因
権威性の法則(原理・原則)が働く原因は、脳が消費エネルギーを節約するからだと考えられています。
人は、考えることを嫌い、面倒くさがる生き物であるため、普段の意思決定を直感的なものに頼る傾向があります。
また、その理由については脳科学でハッキリしており、その名も「2重過程理論」というものが原因です。
脳科学によると、人は「システム1」と「システム2」の思考があるとされており、システム1は直感的な思考で、システム2は論理的な思考を意味しています。
直感的思考(1)は、速い思考という意味で、瞬時に判断・選択をおこなう。
論理的思考(2)は、遅い思考という意味で、じっくり考えたすえに決断・選択をする。
これらを踏まえて、人に権威性がはたらく理由は「普段の意思決定を、無意識に直感に頼っているから」となります。
人は考えることを嫌うため、システム1の思考に頼った結果「権威性の法則」が働く。


日常に潜む「権威性の法則」
- 学歴
- 服装
- お願い
権威性の法則は、日常生活のあらゆる場面ではたらいています。また、この法則が働くことで「正しい選択・行動」ができなくなってしまい、様々なでメリットになる場合もあります。
ここでは、それぞれどのような「時・場面」で働くのか?具体例を紹介していきますので、日頃の判断を歪めないためにも「日常生活に潜む権威性」を理解しておきましょう。
1. 学歴
学歴や経歴など、過去に成し遂げたことや実績は、その人の権威性となります。
例えば「有名大学出身・スポーツで優秀な学校・稼いだ実績・物事を続けた期間」といったようなもので、何かを「説明・説得したい時」などに、これらを提示されてしまうと「この人がいうなら本当かも・この経験があるなら正しいだろう・これを成し遂げたなら信じよう」と、無条件に従いやすくなってしまい、説得力を感じますよね。
このように人は、経験・実績・資格といった何らかの「権威性」を感じてしまうと、無条件で話を信じたり、それだけで疑うことが難しくなってしまいます。
2. 服装
服装にも「権威性の法則」は働きます。実際の実験で、次のような結果が出ています。
社会心理学者:レオナード・ビックマン氏による実験
【実験内容】
電話ボックスの見えるところに10セントを置き、電話ボックスに入った人に、2分後、次のような質問をした。「ここに10セントを置き忘れたのですが、ありませんでしたか?」と尋ねる。
このとき、下記2つのパターンで試したそうです。
- みすぼらしい格好
- きちんとした格好
すると、前者が38%、後者が77%の確率で「あったよ」と回答してくれました。
この実験から分かるように、同じ内容のお願いであっても、服装(権威)によってどう答えるのか?は変わるわけです。
そのため、私たちがする日頃の思考や言動は、権威を感じるものを無条件に信じ、無意識に優先しているわけです。
実験のように「みすぼらしい格好」では、あらゆる面で評価が下がるだけでなく、信用まで落としてしまい知らず知らずのうちに損しているわけです。
ゆえに、コミュニケーションにおいても、少なからず見た目が重要だということですね。
3. お願い事
人には、何か理由をつけるだけでも権威性がはたらきます。例えば、大したお願いじゃないのに「なぜか説得力を感じる」と思ったことはありませんか?これには、理由(権威)をつけることで説得力を感じている可能性があります。
それでは「3パターンでお願いをする」という実験を見てみましょう。
コピー機を使っている人に対して、次3つのパターンのお願いを試しました。
- 先にコピー機を使わせて
- 急いでいるから、コピー機を使わせて
- コピーをしたいから、コピー機を使わせて
すると、それぞれの承諾率は「1=60%」「2=94%」「3=93%」となりました。
このように、それっぽい理由(権威)でも、権威をつけるだけで承諾率は格段に上がり、人は行動を起こす生き物なのです。
権威性に惑わされないための対策は?
権威性に惑わされない方法は「その人の現在を意識して見ること」です。もちろん、人を評価する上では「学歴や経歴なども含めた過去を見ること」は重要でもありますが、それだけを信じていては、騙されることがあるのも事実。
例えば「マルチ勧誘のため、月収100万あると偽っていた」と聞いたり、SNSで見ることも少なくありませんよね。また、このような人に騙される理由として「月収100万も稼いでる人についていけば自分も稼げる」という権威性が大きく関係してると言えるでしょう。
そのため、少しでも疑わしい人と接触した時は、過去ではなく「現在」を重視して評価することが大切です。このような冷静な対処ができると、詐欺や被害あう確率は減り、トラブルを未然に防げるでしょう。
権威性の法則に関連する心理効果
- ハロー効果
- ユニフォーム効果
権威性が関係する心理は、有名なもので上記の3つがあります。ここでは、それぞれどのような効果なのかみていきましょう。
1. ハロー効果
ハロー効果とは、人間がある特定の対象を評価をするとき、そのものの大きな特徴(強い・印象的な部分)に引っ張られてしまい、別のことにおいても大きな特徴と同様の評価をしてしまう心理効果です。
例えば
- イケメン=性格も良い
- 学歴が良い=人間性も良い
- スポーツができる=仕事もできる
このように「〇〇=〇〇」と思ってしまうのは、評価対象がもつ大きな特徴に引っ張られ、全体の評価も同様になってしまうからなんですね。
2. ユニフォーム効果と白衣効果
ユニフォーム効果とは、人が誰かを評価するとき、評価の対象が着るものによって無意識に権威を感じとり、感じた権威に基づく言動をとる心理効果です。
要するに、スーツの格好をした人がたづねてくると「営業か、、、」と嫌気がさして話を聞かなくとも、作業員の人がくると「大事な話かも」と営業であっても最後まで話を聞きやすくなります。このように、着る服によって言動を変えてしまうことをユニフォーム効果といいます。
白衣効果とは、人間は「白衣を着用した人に対して、医師や研究者をイメージし、その者らを偉いと思う(権威性を感じる)ことから、白衣を着た者の言動を信じやすくなる」という心理効果です。
要するに、白衣を着るだけで、その人を敬いやすくなるんですね。またこの2つは、上記『日常に潜む「権威性の法則」の「2、服装」』を具現化したものになります。
まとめ
権威性の法則とは、人間は「専門家に従いやすくなる」という法則的な心理傾向。
また本記事を機に、自身とその活動のお役に立てると幸いです。



本記事が、読者さんと、その活動のお役に立てると幸いです。