アドラー心理学とは、アルフレッド・アドラー(Alfed Adler:1870-193)が提唱した「理論・精神療法・思想・用語」を統合し、1つの体系となった心理学を意味します。アドラー心理学は、アドラー自身がすべてを確立したのではなく、後継者たちが発展させながら現在の形へと変化していきました。日本では「アドラー心理学」という名で知られていますが、正式名称は「個人心理学(individual psychology)」となります。
本記事では、アドラー心理学という概念について、初学者にも簡単にわかりやすく解説していきます。
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アドラー心理学とは
アドラー心理学の「定義・概念」は?
~ 基本情報 ~
正式名書 | 個人心理学(individual psychology) |
提唱者 | アルフレッド・アドラー(Alfred Adler) |
理論 | 目的論・全体論・個人の主体論・仮想論(認知)・社会統合論(対人関係論) |
精神療法 | ライフスタイル分析・3つのライフスタイル(愛のタスク・交友のタスク・仕事のタスク) |
思想 | 共同体感覚 |
用語 | 劣等感・器官劣等性・劣等コンプレックス・勇気づけ・自動グループ |
アドラー心理学とは、アルフレッド・アドラー(Alfed Adler:1870-193)が提唱した、おおよそ上記のものを統合し、1つの体系となった心理学における概念を意味します。
またアドラー心理学は、アドラー自身がすべてを確立したのではなく、後継者となった方々が発展させながら現在の形へと変化していきました。
さらに、日本では「アドラー心理学」という名で知られ正しいと思われていますが、じつは「個人心理学(individual psychology)」という呼び名が本来の名称です。
アドラー心理学の提唱者:アルフレッド・アドラーとは
アルフレッド・アドラー(Alfred Adler)誕生:1870年2月7日 – 他界:1937年5月28日(67歳)は、オーストリアの精神科医、精神分析学者、心理学者。ジークムント・フロイトおよびカール・グスタフ・ユングと並んで現代のパーソナリティ理論や心理療法を確立した1人。
初期の頃のフロイトとの関わりについて誤解があるが、アドラーはフロイトの共同研究者であり、1911年にはフロイトのグループとは完全に決別し、アドラー心理学(正式名書:個人心理学)を創始した。
引用元:Wikipedia
アドラー心理学を簡単にわかりやすく解説
アドラー心理学は「幸せになる・生きるための心理学」であり、おおよそ以下のテーマのもと複数の理論や思想を提唱し、知識を踏まえて実践することで「幸せになる」を実現する心理学における概念。
以下の説明を読んで理解が難しい場合、最後に紹介しているアドラーの名言集(目次からも飛べます)を読んでいくと、何となく理解できたり、感覚的にわかりやすくなると思います。
アドラー心理学を、簡単にわかりやすく解説すると「人が幸せになり、幸せに生きるための心理学」です。
その最もわかりやすい例として、アドラー心理学で投げかけられている下記の「言葉(テーマ)」をご覧ください。
- 人は目的のもと生きている
- 幸せになるには勇気が必要
- 全ての悩みは対人関係にある
- 個々は繋がっており影響を与え合う存在
こうした考えを基に、アドラー心理学で述べるあらゆる知識を踏まえたうえで実践することにより「人が幸せになり、幸せに生きること」を実現するのがアドラー心理学です。
例えばアドラー心理学の「目的論」では、人は常に目的をもって行動するものとされているため「全ての行動(発言や行動、態度や反応・捉え方など)は、目的によって説明可能」と考えています。
つまりアドラー心理学では、人の行動メカニズムを「目的(欲求など)→行動(反応・言動パターン)→結果(出来事)」というように説明します。
逆に、過去の私もそうだったのですが「原因があったから今がある」というように、物事を「原因(出来事)→結果(現在の私)」で説明する原因論で考えることが、広く一般的ではないでしょうか。
アドラー心理学では、この目的論を含め、複数の理論を用いて「日常に起きるあらゆる事象」を説明し、どう変えていけば良いのか?を具体的に教えてくれます。
それでは、少し衝撃的に感じるかもしれませんが、思わず「確かに、、、」と納得してしまう『人間が目的論であるという理由(具体例)』を用意しましたので下記をご覧ください。
部下の失敗に対して「簡単に怒り、怒鳴る上司」は、多くの人からみて「部下がミスしたからだな」と感じるのではないでしょうか。しかしアドラー心理学では、これを完全に否定しています。上司が部下に怒鳴るのは、上司が『上下関係を示したい』といった、威嚇したいといった何らかの目的があるため「怒鳴るという行動を起こす」と考えます。
“なぜなら、些細なミスや大きなミスであれ、怒鳴る上司もいれば、的確に注意して終わる上司もいるから。この違いは、本人の欲求などからくる選択、すなわち目的が違うから「どう行動するかも変わる」ということなんだ。” とアドラーは述べています。
確かに例外もあり、上司の状況や状態といった様々な要因で態度の変化は現れます。しかし、側から見て「そんなに怒ることかな?」と思う場面や「怒り方たくて怒っているような、ぎこちなさを感じること。感情というより、欲が垣間見える感覚」は、誰しも経験があるでしょう。
このようなことを、アドラー心理学では「目的論」というもので語っているわけです。
正直、わたしも心当たりや、思い当たる節がありましたね笑
それに周りを観察しても、同じ出来事に遭遇して「そこまで感情的になることかな?」と思うことで怒る人はいますし、怒ることなく冷静に上手く対処する人もいますよね。
このようにアドラー心理学では、はじめは納得いかない内容も多いですが、時間が経って実生活で当てはまる状況になん度も遭遇し、身に沁みて正しいことを自覚させてくれる理論が豊富です。
そのため今では「自分に気づき知ることで、上手く対処することがアドアー心理学であり、厳しくも、優しさと愛を感じられる概念だな」と思えるようになりました。
アドラー心理学は「幸せになる・生きるための心理学」であり、おおよそ以下のテーマのもと複数の理論や思想を提唱し、知識を踏まえて実践することで「幸せになる」を実現する心理学における概念。
- 人は目的のもと生きている
- 幸せになるには勇気が必要
- 全ての悩みは対人関係にある
- 個々は繋がっており影響を与え合う存在
アドラー心理学は「哲学」なのか?
そもそも「心理学」と「哲学」の両者は、区別をすることはできるものの、明確な違いというものはハッキリしていません。
なぜなら「哲学という大きな学問の枠組みの中に、心理学というものが存在している」からです。
この意味を解説するには、まずは哲学の定義・概念について理解してもらうほうが早いでしょう。
哲学とは、物事の真理や本質、根源や真実といったものの原理・法則を探し求める行為や研究をおこなう学問。
要するに、広い意味(物事・事象・出来事)の真実性や正しさを研究したり、考え方として本質的な結論的見解や、あり方を求めるものという意味です。
例:「善悪とは何か?」について事実を探し求めたり、それを知った上で「どのように考え、マインドセットをするほうが人間全体や個人の将来にとって良い影響を与えるか?」などの結論、答えのようなあり方を考えていく、研究していくことなどに該当します。
心理学とは
心理学とは、人間の心の動き(についてのあらゆる事実)やそれに伴った行動を、科学的に研究・探究する学問。
例:「なぜ人は怒るのか?」について、特定の条件下で多くの人を対象に、何度も実験を繰り返すことで、心の動きとその後の行動が「生じている理由」について科学的に正しい回答などを導き出したり、その根拠のもと様々な状況下(例:行動経済学・臨床心理学など)で活かそうとすること。
このように「哲学」というものは、広い意味で物事の真実性を探究するものであるため、心の真実を解き明かそうとする「心理学」も哲学の枠組みに入るわけです。
また多くの学問は、元々は哲学という学問(概念)から始まり、あらゆる学問へ分類されていったという歴史があります。
そのため「心理学」と「哲学」においても、区別はできても「全く違う学問」と言い切ることは難しいわけです。
アドラー心理学:5つの基本前提(5Basic Assumptions)
1. 目的論 | 物事は「目的」→「行動」→「結果」の順番であるという考え |
---|---|
2. 全体論 | 人間は精神・肉体・意識・無意識を分割できない統一したものだという考え |
3. 仮想論(認知論) | 人間の物事の見方は十人十色であり、自ら意味づけして解釈したものという考え |
4. 個人の主体(自己決定性) | 人間は主体的な生き物であるため、全ては自身で決めているという考え |
5. 社会統合論(対人関係論) | 人間は社会的存在であり、個人個人は常に影響を与え合っているという考え |
基本前提とは、ある特定の学問などにおける「仮定されたもの」という意味で、この前提のもとに理論を組みながら話を進め、事象を説明するためにあるものです。
例えば「あらゆる仮説や考え、別意見や専門的な指摘、時代の流れによる理論の解明」などで話の方向性がズレたり、説明が乱れてしまうことが考えられるため、それらの障害を受けずにアドラー心理学を語るうえでは「5つの基本前提」が必要であり、これが絶対条件となるわけです。
※そのうえで長い歴史をもつ「アドラー心理学」は、現代でも高い人気を誇り、大事にされている概念であることから、その信憑性は高いといえるでしょう。
1. 目的論
目的論とは、人は「目的」から「行動(反応・言動)」を起こし「結果(出来事)」として現れるということを説明した理論です。これは、本人が意識的か無意識的かに関わらず、すべての人は目的を持って行動しており、結果が後についてくる「目的
結果」であり「原因 結果( )」では無いという意味です。アドラー心理学では、「原因(出来事)」があるから「結果(現在の私、または行動)」はこうなったというように、過去から現在を説明する「原因論(原因があるから現在がある)」ではなく、個人は「未来をどうしたい・どうなりたいのか?」という欲に対して、いかなる目的をもって何をするかを選択している「目的論」であると考えます。
目的論は、物事の見方や捉え方といった認知の歪みをもつ人、感情に対して行動が伴わない人に有効な手段です。
なぜなら、つい自分の現在や行動を他人や環境のせいにしたり、過去や原因を探し求めてしまう人は、自分に対して「興味関心をもってもらおうとする目的(あくまで一部の具体例)」をもつ場合などが存在するからです。
ゆえに、目的論で考えることによって感情と言動の不一致に説明がつくようになり、少しずつ自身の問題行動を改めやすくなるので、目的論で考えることが有効です。
2. 全体論
全体論とは、人間の「精神・肉体・意識・無意識」といった要素ごとに分割して理解しても、その人の全体を理解できるわけではない。また、その人の要素を分割して考えず、相互的・体系的に捉える必要があるという考え方です。
アドラー心理学では、人間の様々な要素を分けて考えるのではなく、心と体は繋がっていて「自己矛盾なく統一である」という前提をもって考えていきます。
全体論は、個人を見るさいには1つや複数の要素ではなく、全体を体系的に見ることが重要と考えます。
これは、いわゆる「心・技・体」や「心技一体」のように「心と技術と体のバランスは全体的に良くしていくことが重要で、どれか1つの要素だけが良くても、頼ってもダメである」という考えに近い理論です。
このように、全体論では『体や心のパーツから要素まで、すべて1つの統一したものとして「対象者」をみる理論』となります。
3. 仮想論(認知論)
仮想論(認知論)とは、人間は各々が主観的な意味づけによって物事を「捉え・解釈し・見方を持ち・考えている」という理論です。
アドラー心理学では、人はいわば独自のメガネ(フィルター)を通して世界を仮想的に見ているため、各々の捉え方や解釈の仕方が異なるのだと考えます。
仮想論(認知論)は、誰しもがもつ「思い込み」などからくる認知の歪みがあるというもので、心理学的にいうと「認知バイアス(アンコンシャス・バイアス)」のことです。
人間は、各々が様々な「メガネ・フィルター」越しに物事をみて、捉え、解釈し、反応します。
そのため、何気ない一言で「気分を害し、怒ってしまう人」もいれば、冗談だと捉えて笑い飛ばすこともあります。
このように、各々の主観的な意味づけで物事を捉えることを、アドラー心理学では「仮想論(認知論)」というわけです。
4. 個人の主体論(自己決定性)
個人の主体論(自己決定性)とは、人間は主体的な生き物であるため、個人は「精神・身体・物事」において過去の影響は受けるが、その後の「行動=人生」は自身で選択・判断・決断することが可能という考え方です。
アドラー心理学では、個人は主体的な生き物で様々な過去の影響を受けるが、その後の人生は「自分で決めることができる」と考えます。
個人の主体(自己決定性)は、人間は生まれた瞬間から「自動的に運命が決まるわけではない」と考えることです。
現在がどんな状況や状態であれ、前向きに「今後を自分の意思で決定していくことが可能なんだ」と考える必要があるとアドラー心理学では教えます。
5. 社会統合論(対人関係論)
社会統合論(対人関係論)とは、人間は社会的動物・生き物であるため、すべての行動は対人関係において常に影響を与えており、個々はお互いに「絶えず、繰り返し影響を与えあっている」という考え方です。
アドラー心理学では、個人は1人であっても複数であっても必ず誰かと関わり合っていて、完全に孤立している人はおらず、お互いに影響を与え続けていると考えます。
人間ひとり1人は、社会的に繋がりをもち「常に影響を与える存在である」という考えです。
アドラー心理学では、すべての悩みは「対人関係の悩みである」という言葉が投げかけられますが、要するに「悩み事の裏には必ず誰か人がいて、それは社会的な繋がりである」ということを意味するわけです。
そのため、ひとり1人の悩みが証拠となるように、人間は社会的に生きて、絶えず影響を与えあう存在であると考えます。
アドラー心理学における「哲学的思想」とは
- 劣等感
- 勇気づけ
- 課題の分離
- 共同体感覚
1. 劣等感
劣等感とは、個人が主観的に「自分は劣っている」感じる感覚を意味します。またアドラー心理学では、劣等感を以下2つに分類し考えます。
- 器官劣等生:身体機能が客観的に見て劣っていること(例:弱視・視力が悪いなどの障害や病気
- 劣等コンプレックス:劣等感を使用してライフタスクを回避すること(例:〇〇だから行動しても無駄だ
劣等感に種類はあれど、根本的にはどれも「自分は劣っているという感覚」があることが劣等感です。
また劣等感に対して、多くの人はネガティブなイメージをもつと思いますが、アドラーは「”劣等感じたいは悪いものではない。なぜなら成長のエネルギーになるからだ。”」と述べています。
一方で「劣等コンプレックスは、劣等感を理由に行動しないため、取り払う必要がある。」と述べます。
そもそも劣等コンプレックスは、強すぎる劣等感からくるものなので、本人にとっては「不可能な課題」のように感じ、確信をもってしまっている状態です。
しかしこのような劣等コンプレックスでも、意外と解決策はあるものです。
例えば、変えられないものであれば「自身がどう捉えるか?・向き合うか?・受け入れるか?・認められるか?」ということであり、変えられるものであれば「そのためには何を達成すれば良いのか?・行動は起こしているか?・挑戦しているか?・努力や学びをしているか?」などです。
これらを自身に問いてみることで、今すべきことが見つかるでしょう。
2. 勇気づけ
勇気づけとは、個人(自分もしくは他者)がもつ困難なことへの克服や、変化・成長できるための「勇気・活力・エネルギーを与えること」を意味します。また勇気づけに必要な要素は下記のものです。
- 困難を克服する努力
- 協力できる能力の一部
- リスクを引き受ける能力
勇気づけは、自身の困難を克服するための活力・エネルギーをもつことも意味しますが、それを他者にもたせてあげることも同様です。
勇気づけは誤解されることも多いのですが、褒めたりすることで気分を良くするのではなく、あくまで変化・成長のためのエネルギーをもつ、またはもたせてあげることです。
3. 課題の分離
課題の分離とは、物事におけるあらゆる問題に対して「最終的に引き受ける・責任を負う人は誰にあるのか?」を明確にするという意味です。
例:勉強しない子供の場合、最終的に損をするのは「子供自身」であって親ではない。そのため、最終的に責任を引き受ける子供の課題に対して、親がイライラする方法や土足で介入すべきではないと考えることが、課題の分離です。
課題の分離では「責任は誰にあるのか?」を問い、自分じゃどうしようもできない物事を変えようなどと考えすぎないものであるがゆえに「冷たい思想だな」と思われる方も多いでしょう。
しかし、それは少し誤解されています。課題の分離は「自分は自分、相手は相手」というように、すべての物事において完全に分離するという意味ではなく、相手の課題であっても共通の課題として捉え、ともに考えながら「協力して解決する」というのが課題の分離のあるべき姿だと考えられています。
そのため、相手の課題であっても全く介入しないわけではなく「適切なやり方でアプローチしましょう」というのがアドラー心理学の本来あるべき「課題の分離」となります。
4. 共同体感覚
共同体感覚とは、個人が他者や社会との繋がりを感じる感覚や、その上で関心をもち利益を還元することを意味します。
共同体感覚は、他者や社会との繋がりを感じる感覚のみにとどまらず、関心をもって世の中と接し「なぜ私は生まれてきたのか?」という人類や先祖の部分までさかのぼって考えたり、そのありがたみや理解をしていくといった、広く深い要素です。
そのため、スピュリチュアルなことをイメージされる方も多いでしょうが、全くそういうものではありません。
要するにアドラーが言いたいことは「なぜ生まれてきたのか?→先祖、そして人類の歴史・宇宙の存在がある→理解する(ありがたい)→幸せを感じる」ということです。
他者との繋がりを感じ、深ぼっていくだけで「最終的に幸せを感じることができる」というのが、アドラー心理学が目指している着地点といわけです。
人は、何かを手にいれるというより、幸せを感じることが生きる上で最も重要となりますよね。
ですからアドラーは、こうした思想をもちいたのでしょう。
アドラー心理学:技法(カウンセリング)
- ライフスタイル分析
- 3つのライフスタイル
- 愛のタスク
- 交友のタスク
- 仕事のタスク
ライフスタイル分析
ライフスタイル分析とは、分析対象がもつ物事の「見方・考え方・解釈・思考、行動の癖・信念」などといった性格や人格に近いもの(無意識な行動の背景にある構造)を見極める行為を意味します。
ライフスタイルとは、個人がもつ物事の「見方・考え方・解釈・思考、行動の癖・信念」といった性格のようなもので、無意識な行動の背景にある構造を意味します。
ライフスタイル分析は、もともとアドラー自身が「対象者のライフスタイルを分析すること」でカウンセリング(共同体感覚の育成目的)の技法として用いてきたものです。
またアドラー心理学では、対象者のライフスタイルを見分ける目的や、目指す考え方として「3つのライフタスク」というものを提唱しました。
3つのライフタスク
3つのライフタスクとは、人間関係を3つのタスクとして重要性や永続性的にわけたものを意味します。
アドラー心理学では『すべての悩み・問題は「対人関係にある」』という前提で考えるため「重要性・永続性」によって異なる人間関係を3つに分類したのち、それぞれタスク(課題)として「どのように向き合い、考えていくべきか?・より良くするには、どうしていくか?」を考えます。
・愛のタスク
愛のタスク(課題)とは、永続して運命をともにする人間関係であり、対象者が「恋人・家族」といった親密な関係である人物と、良好で前向きな関係を目指すことを意味します。
愛のタスクで必要な要素は、対象となる相手への「尊重・尊敬」であったり、お互いに「守り合いながら、前向きに育んでいこうとする気持ちや関係」です。
・交友のタスク
交友のタスク(課題)とは、永続するが運命をともにしない人間関係であり、対象者が「友人(家族も含まれる)・知人」といった仕事以外で関わる、または仕事関係なく関わる人物と、前向きで良好な関係を目指すことを意味します。
交友のタスクで必要な要素は、対象となる相手への「尊重・尊敬・興味・関心」を持つことであったり、自身がありのままで居ること(それを受け入れてもらえること)ができる関係、共同体に感謝し貢献することです。
・仕事のタスク
仕事のタスク(課題)とは、永続しない人間関係であり、対象者が「同僚・組織・共同体・社会全体」といった仕事で関わる人や世界の人々が含まれ、対象の人物との前むきで良好な関係を目指すことを意味します。
仕事のタスクで必要な要素は、対象となる相手への「貢献心・協働心」をもって所属することや、仕事の「役割分担・分業」を明確にし進めていくことであり、またその中で自身が成長し、他者も成長すること、そして各々が社会の一員として発展を目指し努力する関係です。
アドラー心理学で押さえておきたい5つの要素【まとめ】
- 目的論
- 劣等感
- 課題の分離
- 仮想論 (認知論)
- 社会統合論 (対人関係論)
ここでは、それぞれの要素(ポイント)について「どのようなものか?」といった誤解の解消や詳細を話すわけではなく「なぜ、このポイントを押さえておくべきか?」といった必要性・人生においての重要性の理由を解説したものです。
ポイント1:目的論
目的論とは、人は「目的(欲求など)」から「行動(反応・行動パターン)」を起こし「結果(出来事)」として現れるということを説明した理論です。これは、本人が意識的か無意識的かに関わらず、すべての人は目的を持って行動しているという意味です。
アドラー心理学では、「原因(出来事)」があるから「結果(現在の私、または行動)」はこうなったというように、過去から現在を説明する「原因論(原因があるから現在がある)」ではなく、個人は「未来をどうしたい・どうなりたいのか?」という欲に対して、いかなる目的をもって何をするかを選択している「目的論」であると考えます。
「目的論」を押さえておきたい理由は、目的論で考えることによって「自責思考」になりやすいからです。
自責思考とは
自責思考とは、例えば、部下がミスをしてしまったら「ミスをした部下が悪い」と考えるのではなく、ミスしてしまう仕組みや要因が自分にあったのでないか?(自分の仕組みづくりや部下に与えた影響、例:プレッシャーなど)が原因だろうと考えていき、改善していくことをさします。
では「なぜ、自責思考が必要なのか?」というと、対人関係に悩みをもつ人の多くが「出来事に対して、他人や過去・環境といった外的要因(他責思考)にある」と考えるからです。
他人や過去・環境というのは、自分じゃどうしようもない対象であり、変えることができないものです。
しかし「対人関係に悩みをもつ人」ほど、自分以外を変えようとして悩みを膨らませたり、永遠と悩み続けることをしてしまいます。
そのため、目的論で考え「すべての行動(言動)は、自分の目的から発生しているがゆえに、結果が生じているのだ」と認知することで、起こった出来事の結果は「自分の目的意識を変えることで変えられる」と思えるようになります。
このように、目的論で考えることによって自責思考を可能にするため、アドラー心理学を学ぶうえで押さえておきたいポイントの1つとなるわけです。
確かに「上手くいかない時期」は、他人を変えたり知ろうとばかりしていたけど、本当に重要なことは自分を知ることだと気づいてからは、少しずつ成長することができましたね。
他人を変えるには、まず自分からという言葉は、そのことを言っていたのだと思います。
ポイント2:劣等感
劣等感とは、個人が主観的に「自分は劣っている」感じる感覚を意味します。またアドラー心理学では、劣等感には2つに分類されると考えます。
- 器官劣等生:身体機能が客観的に見て劣っていること(例:弱視・視力が悪いなどの障害や病気
- 劣等コンプレックス:劣等感を使用してライフタスクを回避すること(例:〇〇だから行動しても無駄だ
「劣等感」を押さえておきたい理由は、自分の劣っている部分を見つめたり、認めることができる強さを持てるからです。
強すぎる劣等感は「劣等コンプレックス」となってしまい、行動を避けてしまうのでデメリットにもなりえますが、適度な劣等感を持てると、自分の苦手な部分を理解し、他者との比較もできるため「もっとこうしよう!」というように活力やエネルギーを持てるようになります。
そのため、劣等感を理解しておくことは、アドラー心理学を学ぶうえで押さえておきたいポイントの1つとなります。
ポイント3:課題の分離
課題の分離とは、物事におけるあらゆる問題に対して「最終的に引き受ける・責任を負う人は誰にあるのか?」を明確にするという意味です。
例:勉強しない子供の場合、最終的に損をするのは「子供自身」であって親ではない。そのため、最終的に責任を引き受ける子供の課題に対して、親がイライラする方法や土足で介入すべきではないと考えることが、課題の分離です。
「課題の分離」を押さえておきたい理由は、自分と相手の課題を明確にすることで「自分ができること・相手がすること」を理解でき、自分じゃどうしようもない部分を気にしない考え方にシフトチェンジしやすくなるからです。
例えば、他人の評価を気にしてしまうタイプの場合、自分は悪いことどころか一般的に見て良いことをしていたとしても、相手は貴方を悪く評価してしまったとしましょう。
このとき、課題の分離で考えると「自分は相手に貢献できたし素晴らしい。そして相手がどう受け取るか?は相手の問題であり、悪い評価を続けて人生的に損をするのも相手」と思うことができます。
さらに、余裕を感じることができれば「相手に対して、どうアプローチすれば良い解釈をしてくれるのか?」と考えることもできるでしょう。
このように、課題の分離を使い「自分が関与できる部分・相手が関与できる部分」を明白にすることで、健全な思考を育てることができるため、アドラー心理学を学ぶうえで押さえておきたいポイントの1つとなります。
ポイント4:仮想論(認知論)
仮想論(認知論)とは、人間は各々が主観的な意味づけによって物事を「捉え・解釈し・見方を持ち・考えている」という理論です。
アドラー心理学では、人はいわば独自のメガネ(フィルター)を通して世界を仮想的に見ているため、各々の捉え方や解釈の仕方が異なるのだと考えます。
「仮想論(認知論)」を押さえておきたい理由は、自分が物事を「どのように見ているか?・解釈しているか?」を知ることでトラブルを避けたり、日頃の解釈をポジティブで良いものへ変化させることがしやすくなるからです。
例えば、日頃の生活でトラブルがあった場合、瞬時にした自分の捉え方や解釈が間違えていたり「相手が伝えたい意図と、自分の受け取り方にズレが生じている」ということが少なくありません。
このように、正しく認知を可能にするには仮想論(認知論)が重要なため、アドラー心理学を学ぶうえで押さえておきたいポイントの1つとなります。
ポイント5:社会統合論(対人関係論)
社会統合論(対人関係論)とは、人間は社会的動物・生き物であるため、すべての行動は対人関係において常に影響を与えており、個々はお互いに「絶えず、繰り返し影響を与えあっている」という考え方です。
アドラー心理学では、個人は1人であっても複数であっても必ず誰かと関わり合っていて、完全に孤立している人はおらず、お互いに影響を与え続けていると考えます。
社会統合論(対人関係論)を押さえておきたい理由は、人は社会的な存在であり、繋がりや影響を絶えず与え合っていることを理解できれば、すべての悩みは「対人関係の悩みである」ということが分かるからです。
自分が悩んでいることの裏には「必ず誰か人がいる」ということを認識できれば、自ずと問題解決への道が開けるようになってきます。また、問題解決への道さえ明確になれば、あとは努力次第です。
このように、社会統合論(対人関係論)を使い「何に悩んでいるのか?その理由はなぜか?」という深い部分を知ることで、問題解決への糸口を見つけることができるため、アドラー心理学を学ぶうえで押さえておきたいポイントの1つとなります。
アドラー心理学の名言・格言集【30選】
【1】健全な人は、相手を変えようとせず自分が変わる。不健全な人は相手を操作し、変えようとする。
【2】自分のことばかり考えてはいないだろうか? 奪う人、支配する人、逃げる人、これらの人は幸せになることができないだろう。
【3】陰口を言われても嫌われても、あなたが気にすることはない。相手があなたをどう感じるかは相手の課題なのだから。
【4】「私は○○である(自己概念)」「世の中の人々は○○である(世界像)」「私は○○であらねばならない(自己理想)」。性格の根っこには、この3つの価値観がある。
【5】人の心理は物理学と違う。問題の原因を指摘しても、勇気を奪うだけ。解決法と可能性に集中すべきだ。
【6】幸せの三要素は、(1、自分自身が好きであること(2、よい人間関係を持っていること(3、人や社会に貢献していること。
【7】あなたが劣っているから劣等感があるのではない。どんなに優秀に見える人にも劣等感は存在する。目標がある限り、劣等感があるのは当然のことだ。
【8】どんな能力をもって生まれたかはたいした問題ではない。重要なのは、与えられた能力をどう使うかである。
【9】未熟な自分を責めてる限り、幸せにはなれない。
【10】「みんなが私を嫌っている」「今回駄目だったから次も駄目だ」という思い込みは、冷静に立証すれば消えていく。
【11】劣等感を言い訳にして人生から逃げ出す弱虫は多い。しかし、劣等感をバネに偉業を成し遂げた者も数知れない。
【12】過去の原因は解説になっても解決にはならないだろう。
【13】使い続けたライフスタイル(生き方の癖)が支障を来しても、人はそれを変えようとはしない。現実をねじ曲げてでも、自分は正しいと思い込む。
【14】あなたのために他人がいるわけではない。「○○してくれない」という悩みは自分のことしか考えていない何よりの証拠である。
【15】妻の機嫌が悪いときに、夫が責任を感じてはいけない。不機嫌でいるか上機嫌でいるかは、妻の課題。その課題を勝手に背負うから苦しいのだ。
【16】劣等感を抱くこと自体は不健全ではない。劣等感をどう扱うかが問われているのだ。
【17】暗いのではなく、優しいのだ。のろまではなく、丁寧なのだ。失敗ばかりではなく、たくさんチャレンジをしているのだ。
【18】できない自分を責めている限り、永遠に幸せにはなれないだろう。今の自分を認める勇気を持つ者だけが、本当に強い人間になれるのだ。
【19】子供は感情でしか大人を支配できない。大人になってからも感情を使って人を動かそうとするのは幼稚である。
【20】自分の不完全さを認め、受け入れなさい。相手の不完全さを認め、許しなさい。
【21】人は失敗を通じてしか学ばない。
【22】「世話好きな人は、単に優しい人なのではない。相手を自分に依存させ、自分が重要な人物であることを実感したいのだ。
【23】信用するのではなく、信頼するのだ。信頼とは裏付けも担保もなく相手を信じること。裏切られる可能性があっても相手を信じるのである。
【24】配偶者を従わせ、教育したいと思い、批判ばかりしているとしたら、その結婚は上手くいかないだろう。
【25】相手を他人と比較してはいけない。ほんのわずかでもできている部分を見つけ、それに気づかせることが重要だ。
【26】「仕事で失敗しませんでした。働かなかったからです」「人間関係で失敗しませんでした。人の輪に入らなかったからです」。彼の人生は完全で、そして最悪だった。
【27】子供にとっては、家族が世界のすべてなのだ。親に愛されなければ、死ぬしかない。だから子供たちは全力で親に愛されようとする。そのときとった命がけの戦略がそのまま性格形成につながっていく。
【28】強がりはコンプレックスの裏返し。
【29】我々が「原因論の住人」である限り、一歩も前には進めません。
【30】あなたが変われないでいるのは、自らに対して「変わらない」という決心を下しているからなのです。
まとめ
- 正式名書:個人心理学(individual psychology)
- 提唱者:アルフレッド・アドラー(Alfred Adler)
- 理論:目的論・全体論・個人の主体論・仮想論(認知)・社会統合論(対人関係論)
- 精神療法:ライフスタイル分析・3つのライフスタイル(愛のタスク・交友のタスク・仕事のタスク)
- 思想:共同体感覚
- 用語:劣等感・器官劣等性・劣等コンプレックス・勇気づけ・自動グループ
アドラー心理学とは、アルフレッド・アドラー(Alfed Adler:1870-193)が提唱した、上記の「理論・精神療法・思想・用語」を統合し、1つの体系となった心理学を意味します。
アドラー心理学の全てを、アドラー自身が創始・確立したのではなく、後継者の方々が発展させながら現在の形へと確立していきました。
日本では「アドラー心理学」という名で知られていますが「個人心理学(individual psychology)」という呼び名が正しい名称です。
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