プロスペクト理論(損失回避法則)とは、人間の損失への感じ方を表し、行動原理を紐解いた理論です。
本記事では、その理論の意味や原因、関数の種類やパターンについて解説していきます。
プロスペクト理論(損失回避の法則)とは
プロスペクト理論とは、人間がする選択・判断・決断において「利益や得のほうよりも、損失のほうを過大評価したり、ストレスを感じてしまいやすいため、結果的にとる行動が不合理なものとってしまう」という心理現象です。
例:2択の選択によって、100%の確率で1万円が得られるものと、50%の確率で当たると2万円が得られた場合、どちらもマイナスにはならないが、何も得られないことを損失と感じ取り「100%得られる選択をしやすい」という理論。※理論の1例であり、他にも当てはまる損失法則が存在します。このように人間は、損失を感じると大きなストレスになるため、必ず損を避けようとしてしまい不合理な行動をする生き物なのです。
プロスペクト理論は、別名「損失回避の法則」ともよばれており、1979年にイスラエル・アメリカの心理学者および行動経済学者でもあるダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)氏によって提唱された「経済学・認知科学」を統合した理論です。
プロスペクト理論(損失回避の法則)が起きる原因
- 本能・遺伝
- 悲しみを感じる時間のほうが長い
1. 本能・遺伝
昔の人々は、常に危険と隣り合わせの環境で暮らしていたと考えられています。
そのため、常に安全である状態を作り出し、それを維持する選択・行動を取ることによって、身の安全を確保していたとされています。
現代では、その名残りから「損失に感じる方を過剰に避ける傾向がある」と考えられており、その結果、損失回避が生じるというわけです。
2. 悲しみを感じる時間のほうが長い
人間は、「喜びを感じるより、悲しみを感じている時間のほうが長い性質がある」という研究結果が出ています。(なぜそのように感じてしまうのか?ということは、現在、明らかになっていません。)
そのため、人間には「無意識に悲しみを避けようとする働き(心理作用)が備わっている」と考えられており、その結果、損失回避な選択を取るというわけです。
プロスペクト理論における2つの関数とは
- 価値関数
- 確率加重関数
1. 価値観数
価値観数とは、得の喜びより、損の悲しみを強く感じる心理傾向。
例えば、「1万円を手に入れたときの喜び」に対して「1万円を失ったときの悲しみ」は、どちらの方が大きくなるのでしょうか。
ほとんどの人の場合、「1万円を失ったときの悲しみ」のほうが大きく感情が動く、または持続するとされています。このように、損失への感情の振れ幅(関数)が大きいことを、価値関数とよびます。
2. 確率加重関数
確率加重関数とは、物事の確率が高いほど低く評価(期待)する反面、確率が低いほど高く評価(期待)する心理傾向。
例えば、台風の影響により「60%の確率で沖縄旅行が中止になる」が「残り40%の確率で行けることになる」という状況下があったとしましょう。
すると、ほとんどの人の場合「残りの40%の確率」のほうに期待し、行ける確率を高く見積もってしまう傾向にあります。
このように、評価が真逆になってしまう感情の揺れ幅(関数)を確率加重関数とよびます。
プロスペクト理論(損失回避の法則)の3パターンとは
- 損失がなくても回避する
- なるべく損失を回避したい
- そもそも損失を回避・避ける
1. 損失がなくても回避する
- 100%の確率で1万円ゲット
- 50%の確率で当たると2万円ゲット
例えば、上記の2つの選択肢があったらどうしますか。ほとんどの人の場合、「1番」を選択するとされています。
このように、どちらを選んでも損失(マイナス)にはならないが、得られなかったことを損失と捉えてしまうため、人は「1番」を選びやすくなります。
2. なるべく損失を回避したい
- いまある借金が半分になる
- じゃんけんに勝つと借金は帳消し
例えば、上記2つの選択肢があったらどうしますか。ほとんどの人の場合、「2番」を選択するとされています。
このように、どうせ元々ある借金(損失)なら、いっそ帳消し(損失回避)にしたいと思うため、人は「2番」を選びやすくなります。
3. そもそもの損失を回避・避ける
- 勝負で勝つと1万円もらえるが、負けると1万円の支払いがある。
例えば、上記のチャンスがあったらどうしますか。ほとんどの人は「そもそも勝負をしない」という選択になります。
このように、どちらを選んでも損失を生む可能性があれば、「そもそも選ばない」という選択をしやすくなるのです。
まとめ
プロスペクト理論(損失回避法則)とは、人間の損失への感じ方を表し、行動原理を紐解いた理論です。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。
本記事が、読者さんのお役に立てると幸いです。