EQとは、別名「心の知能指数」ともよばれるもので、対人関係を良好にしたり保つ能力のことをさし、またこれらを表す指標のことをいいます。
本記事では、いま現代で「IQ」よりも必要とされている「EQ」というものについて、意味や高い人の特徴から「IQ・EI・AQ」との違いまで、わかりやすく解説していきます。
EQ(心の知能指数)とは
EQとは、大まかに「対人関係を良好にする能力」という意味で、具体的には『自身と他者の「感情・気持ち」を察する指数であり、これらを読み取ったうえで「自身と他者に対して良い方へコントロール、またはアプローチする人格的能力(性格)」』と定義されており、感情の「識別・利用・理解・調整」という4つの異なる能力で構成されています。
EQは「Emotional Intelligence Quotient」を略したもので、始まりは、1990年にピーター・サロベイ博士とジョン・メイヤー博士によっておこなわれた研究が起源となり提唱された概念です。
その後、1996年にアメリカの心理学者であるダニエル・ゴールドマン(Daniel Goldman)氏が出版した「書籍:Emotional Intelligence」のなかで書かれたことによって、多くの人に知れ渡るようになりました。
- 感情能力
- 感情指数
- 心の知能指数
EQを構成する4つのブランチ(個別能力)とは?
- Identify(識別):感情の識別
- Use(利用):感情の利用
- Understand(理解):感情の理解
- Manage(調整):感情の調整
1. Identify(識別):感情の識別
Identify(識別):感情の識別とは、自分と他者の気持ちや感情を「知る・読み取る能力」という意味です。これらの能力を適切に理解し扱えることが感情の識別を表す指標となります。
2. Use(利用):感情の利用
Use(利用):感情の利用とは、目的を達成するために「自分の気持ちや感情を必要な状態にする・共感する能力」という意味です。これらを理解しコントロールできることが感情の利用を表す指標となります。
3. Understand(理解):感情の理解
Understand(理解):感情の理解とは、自分や他者に起きている感情のメカニズムと続きを「推測する能力」という意味です。これらを理解し扱える指標が感情の理解となります。
4. Manage(調整):感情の調整
Manage(調整):感情の調整とは、上記3つの能力(識別・利用・理解)を基に「最終決定をおこなう能力」という意味です。この能力の高さを表す指標が感情の調整となります。
EQが高い人の特徴8つとは?
- 共感力がある
- 心の柔軟性がある
- 切り替えが上手い
- 白黒思考を持たない
- 過去より未来を重視する
- ポジティブ思考を持ってる
- 行動を起こすことができる
- 自分自身をよく理解している
1. 共感力がある
共感力とは
共感力とは、相手の気持ちや感情、意見や考えなどを察したり、寄り添うことのできるスキル・能力をさします。
「EQ」の高い人は、相手の感情をさとったり気持ちに寄り添うことが得意という特徴があります。
共感力が高いというのは「EQを構成する4つのブランチ(個別能力)」のほとんどの能力が働くため起きることです。ですから、共感力が高いほど「EQ」の指標も高いと考えて良いでしょう。
2. 心の柔軟性がある
心の柔軟性とは
心の柔軟性は「心理的柔軟性」とも呼ばれるもので、様々な物事に対しての先入観がなく、時と場合に応じて適切で臨機応変な対応ができるスキル・能力をさします。
「EQ」が高い人の特徴として、物事への先入観や思い込みが少なく、その時々をうまく対応する能力が高い傾向にあります。
コミュニケーションなどでは「ハッキリとした答え」というものがないため、その時々をうまくやっていく必要があります。
ですから、EQの高い人は「そういった柔軟性を用いてコミュニケーションや物事を上手にこなす力」というものが高い傾向にあるわけです。
また、心の柔軟性がある人は「EQを構成する4つのブランチ(個別能力)」の感情の利用・理解の2つが大きく働くため発揮しやすくなる能力だと考えられます。
3. 切り替えが上手い
「EQ」の高い人は、気持ちの切り替えや「物事のON/OFF」が得意な特徴をもっています。
例えば、気持ちの切り替えでは「嫌なことであったり、怒りの感情をもってしまった時の対処」で、物事のON/OFFでは「仕事とプライベートの切り替えや区別がしっかりできる状態」をさし、これらが上手にできる人は「EQ」も高い傾向にあります。
また、このような特徴は「EQを構成する4つのブランチ(個別能力)」の感情の利用・調整が大きく働くことによって発揮しやすくなります。
4. 白黒思考を持たない
白黒思考とは
白黒思考とは、物事の受け取り方や捉え方、発想や選択・判断においてどちらか一方の極端に偏ってしまう思考・反応を意味します。
例:ステレオタイプな人
2で述べた「柔軟性」とも通づる話ですが、コミュニケーションや物事には「100%これだ」という答えがないため、柔軟性をもつ必要があります。
ですから、その逆として「白黒思考を持っていない」という特徴もあるわけなんですね。
5. 過去より未来を重視する
「EQ」の高い人は、過去より未来を重視する傾向にあるため、過去に起こったネガティブな出来事に捉われず「これから(未来)をどうしていくか?」ということを考える特徴があります。
また、この部分は3で述べた「切り替えが上手い」という特徴・能力の反対であり、物事を「まぁいっか」と前向きに捉えることのできることです。
6. ポジティブ思考を持ってる
ポジティブ思考とは
ポジティブ思考とは、物事を明るく楽観的に捉えたり、前向きに考えとらえることのできる思考を意味します。
この特徴は、上記で解説した様々な要素が組み合わさったもので、大きく一括りにすると「ポジティブ思考を持つ特徴」となります。
また、ポジティブ思考といっても様々な要素が複合されていますが、定義の通り「物事を明るく捉える力」がポジティブ思考であり、「EQ」の高い人はこの特徴を多く持っている傾向にあります。
7. 行動を起こすことができる
「EQ」の高い人は、おもに「コミュニケーションを良好にするための言動」を自分から起こす特徴をもっています。
例えば、怒りやネガティブな感情が起きてしまっても「目的を見失わないための言動」を取ることができたり、コミュニケーションでは『相手と仲良くなるために「自分から声をかける・話題提供を積極的にする」』など、このような行動を起こせる能力を持っている傾向にあります。
8. 自分自身をよく理解している
「EQ」の高い人は、自分のことをよく理解している特徴があります。
例えば、気持ちや感情の場合『その時々に「こんな気持ちや感情を持っているな・起きてしまったな」』といったことから「なぜそれが起きたのか?」という流れまで自覚していたり、その他の「強み・弱み」といった部分などもよく理解しています。
そのため、なにか出来事が起こったさいは、これらを「どう対処するか?」ということまで考えることができるようになり、上手く対人関係を築いていくことが可能になるわけです。
EQと「IQ・EI・AQ」はどう違う?
- 「IQ」とEQの違い
- 「EI」とEQの違い
- 「AQ」とEQの違い
1. 「IQ」とEQの違い
IQとは「Intelligence Quotient」の略で、日本語では「知能指数」とよばれており、物事の理解力や記憶力、瞬時に解決する頭の回転力を表す指標を意味します。(例:即興でバトルするラッパーの言葉遊びや返答力。これらは、IQの高さが可視化できると思います。)
EQとの違いは、知能の高さ、良さを表す指標である点です。
EQは「対人関係を良好にする能力」を測る指標である反面、IQは「頭の良さ」を測る指標です。
そのため両者は、「心の能力=EQ」「脳の能力=IQ」という違いがあります。
2. 「EI」とEQの違い
EIとは「Emotional intelligence」の略で、日本語では「感情的知性」とよばれており、自身の感情を理解・認識することから、相手の感情を理解・認識し影響を与える能力、またこれらを表す指標を意味します。
EQとの違いは、ほとんど無いに等しく、同じ意味の概念と考えて良いでしょう。
実は、元々は「EI」という概念から始まっており、最終的にいまの「EQ」へ変化したといわれています。
3. 「AQ」とEQの違い
AQとは「Adversity Quotient」の略で、日本語では「逆境指標」とよばれており、個人・組織が逆境に阻まれたとき、それを対処・対応する能力(乗り越える力)を表した指標を意味します。
EQとの違いは、逆境を乗り越える力を表す点です。
EQは「対人関係を良好にする能力」である反面、AQは「逆境を乗り越える能力」を表すものです。
そのため両者は、「EQ:人と良い関係を築く指標か?」「AQ:逆境や障害を乗り越える力の指標か?」という違いがあります。
なぜ今、IQよりEQが重要視されているのか?
- 全てのことにおいて、対人関係が絡むから
- ビジネス成功者は、対人関係能力に優れいていたから
なぜ、いま最も求められている能力が「IQではなく、EQであるのか?」ということを、不思議に思う方も少なからずいるでしょう。答えはいたってシンプルで、次の2つです。下記では、この2つについてわかりやすく解説していきます。
1. 全てにおいて対人関係が絡む
1の「全てのことにおいて対人関係が絡む」という理由は、これを読む多くの人が「何となくわかっていた」もしくは「考えれば、確かに」と思うのではないでしょうか。例えば、下記のものが「必ず対人関係が絡んでくる」一例となります。
例:サイト運営(ビジネス立ち上げ)
- サイト制作=発注相手
- サイト記事作成=ライターさん
- サイト運営=読者さん
このように、簡単にあげた3つだけでも対人関係が絡むことになりますし、どんな物事を行うにせよ、どこまでいっても必ず誰かと関わることになったり、対=人となるわけです。
そのため、今もっとも求められ、重要視されているのが「IQではなく、EQである」ということなんですね。
2. ビジネス成功者は、対人能力に優れいている
そもそも、EQを提唱したサロベイ・メイヤー博士が「EQを提唱する経緯」となったのが、ビジネスマン・ウーマンの両者を対象に「フィールドワーク」を行ったことがキッカケです。
このフィールドワークでは「IQが高い人が、必ずしもビジネスで成功するわけではない」ということがわかりました。そして、この結果に疑問を抱いた2人が、その謎を研究した結果、EQを提唱するまでに至ったわけです。
また、そこまでの経緯で分かったことは「ビジネス成功者は対人能力、すなわちEQが高い」ということです。
では、なぜそのような結果になったのでしょうか?
自分、それから他者の感情や気持ちを理解し適切なアプローチ(働きかけ)ができるため、困ったときだけでなく、必要なときなど様々な状況において協力を得やすいことが理由だと考えられています。
要約:対人関係に優れているため、多くの協力者が集まるようになった結果として、事業が成功しやすくなったことがわかりました。
このように、EQが高いことは成功率も高いことから、今の時代でもっとも求められる、または重要視される能力となったわけです。
EQを高める方法は?低い人でも高められる?
- 理想を持つ
- 感情を書き出す
- 要素で共感してみる
- 経験:良い行動を起こしてみる
- 相手の「気持ち・感情」を聞く・探る
1. 理想を持つ
EQを高めようと思ったら、まずは理想の体系(こうなりたい人物像など)を持つことが重要です。なぜなら、人が行動したり成長し始めるときは「理想の何か」を持っていることが多いからです。
例えばスポーツなら、有名な選手や身近で上手い選手をみて憧れ、真似ることは多いでしょう。
ビジネスなら、大企業の社長や有名な経営者など、このような人らの話を聞いたり発信を見て学ぶ人、モチベーションを上げる人は多いですよね。
このように、人の原動力や目標・目的となる理想(人物像など)を持つことで、EQを高め続けることが可能となるわけです。
2. 感情を書き出す
次に、自分自身の良いときや悪いときの感情を書き出すということをやってみましょう。
なぜなら、自分自身の様々な感情を書き出すことで「こういう時や場合に、こんな感情になりやすい」といった分析や、自分自身の心についての理解ができるからです。
そのため、自分自身に起こった感情を書き出してみるということは、EQ要素の1つでもある「自分の理解」を獲得する上でも、とても重要なこととなります。
3. 要素で共感してみる
EQを高める方法として、要素を見つけ共感してみることが大切です。
そもそもEQが高い人は、相手の状況や状態をよく理解していたり、それらを上手く想像する能力が高い傾向にあるため、結果として共感力も高くなるわけです。
しかし、このような特性は「先天的(生まれつき)」であったり、幼少期に養える環境にあったことで「後天的(のち)」に取得した可能性が高いものです。
また、これらを持っていない人が大人になって身につけようとするのは難しく、非常に困難なことです。
例えば、ポジティブな人に「その考えは少数派だし、学びを得ない考えだからやめた方がいいよ」ということが、世間一般的な常識だったり考えであっても変えることは難しいですよね。
そのため、相手の全てに共感するのではなく、相手を尊重したまま「共感できる要素のみ」を探し共感することで、共感力を身につけていくことができるようになっていきます。
4. 経験:良い行動を起こしてみる
EQを高めるには、経験を積むことが重要となるため「良いと思う行動を自分から起こしてみること」が必要です。
そもそもEQが低い人は、EQが高い人の言動を毛嫌いしていたり「小馬鹿にしている」ということも少なくありません。しかし、実際に行動してみることで「その価値観」というものは、大きく変わることがあります。
例えば「なんか嫌いなYouTuber」がいて、おすすめに出てくる度に見ていたら「好きになっていた」という経験がある方は多いのではないでしょうか。
このような経験と同じで、人は嫌うモノのことを「たいして理解していない」という場合が多く、また行動においても理解が足りていないだけなんです。
なので、どんなことでも行動を起こしてみて、少しずつそれに慣れていき「良いものだ」と経験を通して理解する必要があります。
そうすることで、「実はこのやり取りは気持ちの良いことなんだ」とか「人間はこうある方が良いのか」といったように、感覚的に分かってくるようになったり「毛嫌いしていただけなんだ」と思えるようになるでしょう。
このように、「行動を起こし経験する」ということは、EQを高める上でとても重要なのです。
5. 相手の「気持ち・感情」を聞く・探る
EQを高めるには「相手の気持ちや感情がどのように動いているのか?・どのように考え、思考しているのか?」を聞いてみたり探ったりすることも重要です。
そもそも人間は「自分の考えや思考回路、気持ちや感情は他者と同じで多数派だろうな」と思い込みやすい生き物です。(引用:偽の合意効果)
そのため、普段からよく接する相手でも、観察し探ってみたり聞いてみることで「気持ちや感情、思考回路までこんなにも違うんだ!」という発見も少なくありません。
ですので、他者の行動が自分と違っていたら「どう考えているのか?」ということを聞いてみたり、探ってみることをしてみましょう。
EQは、低い人でも高められる?
EQは、ここまで話してきた通り「対人関係能力を測る指標」という意味です。なので、頭の良し悪しは関係なく、鍛えることで高められます。
なぜなら、例えばIQの場合は「頭の良さを測る指標」であるため、勉強や訓練をしたとしても元々の脳(スペック)は変えることができないため、高めるとしても人によって上限があります。
しかしEQの場合は「対人関係能力=性格」のようなものであるため、後天的に身につけたり「変化・修正」していくことも可能なわけです。
なので「いまEQが低いから」といって諦める必要はありません。これから、自分や他者の感情とそのメカニズムについて知識をつけ、身につけるための訓練をしていくことで、EQを高めることもできるようになるでしょう。
まとめ
EQとは、別名「心の知能指数」ともよばれるもので、対人関係を良好にしたり保つ能力のことをさし、またこれらを表す指標のことをいいます。また現代では、IQよりも重要視されている能力といわれています。
そのため、EQが「低いな・低いかもな・高めたいな」と思ったり感じるという方は、ぜひ5つの方法を試してみましょう。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。
本記事が、読者さんのお役に立てると幸いです。