スリーパー効果とは、信頼に欠ける人からの情報でも、時間が経つにつれて情報の信用度が上がる心理傾向。
本記事では、スリーパー効果の意味や原因、実験や具体例について解説していきます。
スリーパー効果とは
スリーパー効果とは、信頼性の低いソース(情報源)から得た情報でも、時間の経過とともに情報の信用度が高まる心理現象。
信用に欠ける人やメディアから得た情報でも、時間が経つにつれて情報の信用度があがること。(例:なぜか知っている知恵や知識があり、その情報が正しいと思うことなどに該当する。
スリーパー効果は、1951年にアメリカ心理学者のカール・ホブランド(Carl Ivor Hovland)氏とワルター・ワイス(Walter Weiss)氏によって提唱された理論で、別名「居眠り効果」「仮眠効果」などとも呼ばれています。
このように人は、信用度の低いところから情報を得ても、時間が経つにつれて情報だけの信用度は高まる生き物です。
スリーパー効果の原因とメカニズム
スリーパー効果が起きる原因は「時間の経過によって忘れてしまうこと」で、メカニズムは下記の通りになります。
初めて情報を得たときは、元となった情報源の信用度が低くとも、その情報源は時間の経過とともに忘れてしまい、情報だけが残るため、スリーパー効果という現象が起きるのです。
省略すると、情報源の信用度に関する記憶は薄れて情報だけが残るため、スリーパー効果が発動するというわけです。
そもそも人は、情報を得るときに「どこの・誰からの情報なのか?」というソース(情報源)によって、無意識に信憑性に欠けるか否かの判断をする傾向にあります。
また、そのメカニズムの中で下した判断がある反面、しばらくすると「聞いた話はこんなものだった」という内容だけが残り、情報源の記憶がなくなっていくため、スリーパー効果が生じます。
ちなみに、スリーパー効果が働くのは、約1ヶ月後だと言われています。
この期間で情報源の記憶が薄れていき、情報だけの信頼度が上がるんですね。
スリーパー効果の実験内容
ホブランド氏とジャニス氏による実験では、次のようなことが行われました。
『抗ヒスタミン剤は、医師の処方なしに販売されても良いと思うか?』という題材で「賛成派(Aグループ)」と「反対派(Bグループ)」の学生にわかれてもらいました。
その後、賛成派(Aグループ)には否定記事を、反対派(Bグループ)には賛成記事を読ませたのち、Aグループには信頼性の高いところ(大手メディアなど)の情報だと説明し、Bグループには信頼性の低いところ(個人ブログなど)の情報だと説明した。
すると、Aグループは22.6%の人が意見を変えた反面、Bグループは13.3%の人しか意見を変えませんでした。
さらに実験から4週間後、もう一度、意見を尋ねたところ「それぞれ2つのグループは、記事の信憑性に対する差がなくなっており、記事の内容だけが残っていたため、記事内容に対して肯定的になりつつあった」ということが明らかになりました。
このように、時間の経過とともに情報源を忘れて、情報だけが分離することで「スリーパー効果」が起きるんですね。
スリーパー効果の由来は?
スリーパー効果とは、提唱者であるカール・ホブランド氏が命名したものです。
その理由は、『行動すべき時まで敵国に潜み、一般人として暮らす工作員を指す「スリーパー(Sleeper)」という言葉』が由来となったと言われています。
意味的には、情報源の信頼性が眠ってしまうこと=「スリープ(Sleep)」の意味で、そう名付けられたと理解しておいても良いでしょう。
スリーパー効果の具体例・事例は?
スリーパー効果は、よくビジネスの手法として応用される事の多い心理効果です。そのため、ここでは日常的な具体例に交えて、実際に行われた活用事例もみていきましょう。
具体例:日常
- ワイドショー
- ネット記事やニュース
- 選挙カーでの選挙活動
ここでは、日常的に起きやすい具体例3つを紹介していきます。
1. ワイドショー
ワイドショーでは、さまざまな出来事を取り扱いますが、噂や疑惑といった根拠のないニュースについても多く議論されています。
また、そこで働きやすくなるのがスリーパー効果。
例えば、根拠のない報道に対して「これはどうだろう?違うんじゃない?」と思っていた内容でも、時間が経つにつれて情報だけが残り、報道していたメディアや議論していた人のことは忘れてしまうため、次第に「あり得るかも」という気持ちが出てくるでしょう。
このように、時間の経過と共にワイドショーのことは忘れ、情報だけが残って一人歩きしてしまう状態がスリーパー効果です。
2. ネット記事やニュース
ネットの記事やニュースで見かける報道も、上記と同じようにスリーパー効果が働きやすくなります。
例えば、信憑性が薄いメディアの記事の見出しをみて「本当かな?」と、最初は疑う傾向にあっても、時間が経つにつれて「あり得るかもしれない」と思うようになりやすくなります。
このように、時間の経過と共にメディアの信憑性は忘れてしまい、情報だけが残ることでスリーパー効果に陥ります。
3. 選挙カーでの選挙活動
選挙カーに乗って選挙活動をする光景を、たびたび見かけることがありますよね。このような場合にも、スリーパー効果は働きやすくなります。
例えば、始めは「うるさいなぁ、不愉快だな」と感じていても、単語やキーワード、もしくは内容がある程度きこえてきて、いざ選挙会場に出向いたときには「不愉快だな」と感じていたことや人物は薄れてしまい、単語やキーワード、または内容だけは記憶に残っているため、その人を選びやすくなります。
このような現象はプライミング効果にも関連しますね。
このように、不愉快に感じていても情報や内容だけが残ってしまうため、スリーパー効果に陥ります。
事例:プロパガンダ映画
プロパガンダとは、意志や思考、行動などを特定のものへ誘導する意図的活動のことを指します。
スリーパー効果が働いた事例として、もっとも有名なものは「プロパガンダ映画」です。
またプロパガンダ映画は、戦争が行われるさいに「兵士の士気を高める目的」で上映される映画のことで、第二次世界大戦の真っ只中である1940年代にも製作および上映がされました。
当時、アメリカで上映されたフランク・キャプラ監督によるシリーズ作品『Why We Fight(翻訳:なぜ我々は戦うのか)』を調査したところ、結果、兵士の士気は高まらなかったそうです。
理由は、そもそも「国民や兵士はプロパガンダ映画であるということを知っていたから」というものでした。作られ、上映された意図を知っていたのであれば、士気が上がらないのも当然ですね。
しかし、ホブランド氏(提唱者)が再度、2ヶ月後(約9週間後)に見た兵士とそうでない兵士を調査したところ「内容そのものは覚えてなくとも、映画の影響は残っていたため、メッセージに肯定的になりつつあった」ということがわかったそうです。
ホブランド氏は、ここからヒントを得て「スリーパー効果」を提唱するに至ったといわれているため、そういった意味でも、知名度の高い一説となっています。
まとめ
スリーパー効果とは、信用度が低いものからの情報でも、時間の経過とともに情報の信用度が高まる心理現象。
そのため、マーケティングとして活用するなら約1ヶ月を目処に、情報から物事を判断する際は「再度、調べること」をオススメします。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。
本記事が、読者さんのお役に立てると幸いです。