心理的リアクタンス理論とは、人は「他者から強制されると抵抗したくなる」という心理傾向。
本記事では、この心理の意味や原因、日常に潜む具体例などについて解説していきます。
心理的リアクタンス理論とは
心理的リアクタンスとは、他者による強制や自由を制限されることで、激しく反発・反抗したい欲が生まれ、自由を回復しようとする心理現象です。
例:なにかを命令されたり、自分の思う通りではなく、他者から強制的なやり方で物事を行わなければいけない時に、不快感を感じたり反抗したくなること、または反発すること。このように、人は強制されると不快感を感じたり、反発・反抗したくなる生き物なのです。
心理的リアクタンスは、1966年にアメリカの心理学者であるジャック・ブレーム(Jack Brehm)氏によって提唱された理論です。
心理的リアクタンスが発動する原因は?
心理的リアクタンスは、人間が生まれ持った欲(自分で決めたい・自由でありたいなど)からくるものだと考えられています。そのため、この欲を阻害されることで、反発心や抵抗心が生まれるわけです。
また心理的リアクタンスは、自分の意志と強制されたものと同じことでも、メリットが大きいことであっても発動してしまいます。
ですから、「やろうとしていたこと・メリットしかないこと」でも強制されると反発してしまい、やりたくなくなったり「やらない」といった選択を取ってしまうことがあるのです。
「心理的リアクタンス理論」に似た心理とは
- カリギュラ効果
- バックファイア効果
カリギュラ効果との関連性や違いは?
カリギュラ効果とは、物事を禁止されると「逆にしたくなる、興味が湧く」という心理現象です。例えば「◯◯な人は見ないで」と言われれば見たくなったり、「やるな」と言われると返ってやりたくなることを指しており、逆の行動をとりたくなる心理に該当します。
このように、禁止されるとやりたくなってしまう(逆の行動を取る)のがカリギュラ効果です。また、一見すると心理的リアクタンスと同様にも感じますが、カリギュラ効果の場合は「禁止されるとしたくなる」というもので、心理的リアクタンスは「制限されると反発する」というものです。
そのため、カリギュラ効果は「逆の気持ち・行動」になり、心理的リアクタンスは「制限されると何かしらの抵抗をしたくなる」という違いがあります。
バックファイア効果との関連性や違いは?
バックファイア効果とは、人が信じているものを否定されたとき、または反対意見や根拠のある情報を提示されたとき、もともと信じていたものを肯定し、意志がより強く強固なものになってしまう心理現象です。例えば、間違いを指摘されると「つい意地を張ってしまう」という場面に当てはまる現象です。
バックファイア効果は「意志や信念といった気持ちを強固にする」という現象であり、カリギュラ効果は「逆の気持ちになったり行動をしたくなる」という現象です。そのため、両者は「気持ちを頑なにするか?(バックファイア効果)」「逆のことをしたくなるか?(カリギュラ効果)」といった違いがあります。
このように、自分が信じていたものを否定されると、信念をより強くしてしまうことを「バックファイア効果」といいます。また、こちらも「心理的リアクタンス」に良く似ていますが、もちろん違う心理効果に属します。
心理的リアクタンスは「制限されると反抗・反発したくなる」という反面、バックファイア効果は「否定されると意思を固くしてしまう」というものです。そのため、両者は「反発心を持つか?(心理的リアクタンス)」「自分を貫くか?(バックファイア効果)」といった違いがあります。
日常に潜む「心理的リアクタンス」
- 命令される
- 制限される
- 誘導される
ここでは、それぞれ日常生活の「どの場面・時」に働いているのか見ていきましょう。
1. 命令される
子供の頃、よく「勉強しなさい」と言われると同時に、「今やろうと思ってた」と反発した経験がある方は、多いのではないでしょうか。
他には、学校で先生に「ちゃんと宿題をやってきてよ」と言われると、「わかってるよ!」「いちいち言うなよ」と思うことがあるでしょう。
これが、心理的リアクタンスが日常ではたらく一例です。また、これは大人になってからも同様のことが起きます。
例えば、会社で上司・先輩などに、期限が残ってる仕事を「早く片付けろ」と言われると、やりたくなくなってしまったり、イラッとすることもありますよね。
こうした気持ちを抱いてしまうのは、心理的リアクタンスが働くからなんです。このように、人は命令されることで反抗心を抱いてしまう生き物なのです。
2. 制限される
人は、決めつけるような言い方をされても、心理的リアクタンスが発動します。
例えば、「〇〇さんは気分屋だね」と言われると、「違うよ!」と言いたくなりますよね。仮にそうだとしても、「決めつけるな」と思ってしまうのは、心理的リアクタンスが働くからなんですね。
このように人は、決めつけられることでも心理的リアクタンスが働くのです。
3. 誘導される
人は「自分のすることは自分で決めたい」という欲を持っています。そのため、他者から操られたり誘導されていると感じると、不快感(心理的リアクタンス)を抱きます。
例えば、こっちの方が得だから「こうしようよ!」と言われると、「ちょっとな〜」と感じることはありませんか。
また逆に、「それじゃダメだよ、こうした方が良いよ!」と言われると、「なんだよ!」って気持ちになりますよね。
このように、人は「誘導されて自分の意思で決めることができない」と感じてしまうと、反抗心を抱く生き物なのです。
心理的リアクタンスの対策・改善の方法は?
- 自分が陥らない対策法
- 相手に発動させない方法
ここでは、自分と相手に対する2つの対策方法について見ていきましょう。
1. 自分が陥らない対策法
- 心理的リアクタンスを意識する
自分に心理的リアクタンスを発動させない、または発動してしまったときの対処は、根性論に近いしいものになってしまいます。
そのため、上記の「心理的リアクタンスを意識する」という方法以外、有効なものはないでしょう。
つまり「発動してしまったらどうするか?」「発動させないためにはどうするか?」に関する答えは難しく、常に意識して物事を捉える他ないのです。
ですから、心理的リアクタンスは決して悪いものではなく「発動してしまったら仕方ない」くらいの軽い気持ちで考えるようにしましょう。
心理的リアクタンスは、誰でも陥るものなので発動してしまっても仕方ありません。そのため陥ったときは、自分も、他者も、許してあげることが大切です。
2. 相手に発動させない方法
- 説得しない
- 選択肢を与える
- 質問形式に変える
自分に対しては上記のように述べましたが、「相手には発動させないような言い方」をすることができます。
その方法が「説得しない」ことです。説得すればするほど、相手は反発心を抱きます。そのため、説得しないことがもっとも効果的な方法となります。
そのやり方として「選択肢を与える」「質問形式に変える」という2つの方法を意識すると良いでしょう。
人は、選択肢を与えることで「自由に選べる」と思えるので、強制や制限を感じずにいれます。
また、質問形式に変えることで「強制されてるわけではない」と無意識に感じることができて、心理的リアクタンスを回避できます。
このように、「説得しない」ということを意識し、2つの方法を活用することで心理的リアクタンスを回避することができます。
まとめ
心理的リアクタンス理論とは、人は「他者から強制されると抵抗したくなる」という心理傾向。
この心理は誰でも陥るものであり、どうしようもないものですが、知っているだけで考え方を変えることはできます。
そのため、コミュニケーションをより良いものにしたい方は、どこか頭の片隅にでも置いておくと良いでしょう。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。
本記事が、読者さんのお役に立てると幸いです。