一貫性の原理とは、人間が「自分の言動を一貫させたい」と思う心理傾向です。
本記事では、その心理の意味や原因、具体例についてわかりやすく解説していきます。
一貫性の原理(原則・法則)とは
一貫性の原理(原則・法則)とは、人間が自分の『「行動・発言・態度・信念」を一貫したものとしたい』とおもう心理現象です。
例:自分の行動・発言・態度・信念を統一させること、または統一させたいと考えたり思うこと、そうするべきだと無意識に思い込むことなどに該当する。このように人間には、行動や発言を一貫したものとしたい、とする心理傾向があります。
一貫性の原理:クッキーの実験
一貫性の原理で有名な実験は、消費者行動の研究にたずさわるダニエル・ハワード氏がおこなったものです。
実験内容:アメリカ(テキサス州)の住人を対象に「飢餓に苦しむ人の支援のためにクッキーを買いませんか。収益は貧しい人たちの食費のために寄付されます。」という内容の電話をかけるもの。
- パターン1:上記の通りにお願いする
- パターン2:上記の前に「ご機嫌いかがですか?」と質問してからお願いに入る
結果:普通(パターン1)にお願いしたときは18%の方がお願いを受け入れてくれたのに対して、質問(パターン2)を入れてからお願いした場合は了承率が32%まで引き上がりました。
理由:自分の機嫌をYESと答えることで「恵まれている」と感じるため、一貫性が働き、購入の了承率が上がったと考えられる。
一貫性の原理が生じる原因
- 選択の幅を狭めるため
- 社会的信用を得るため
- 一貫したい欲を持つため
- 認知的不協和を解消するため
1. 選択の幅を狭めるため
人間には「システム思考」というものが備わっており、脳の消費エネルギーを節約するため「物事を考え選択することを嫌い、好まない」という傾向にあります。
ですから、一貫した行動を取ることによって選択の幅を狭めて「考えないようにすることができる」といった理由から、人は無意識に一貫した言動を取ったり、一貫したいと思うようになります。
2. 社会的信用を得るため
あらゆるコミュニティや社会において、コロコロと言動を変えていては、他者からの評価が下がり、信用度も落ちてしまいます。
そのため、ひとは一貫した行動をみせることにより、自分という人間を理解しやすくさせて「コミュニティでの信用度を上げよう」と考える傾向にあります。
このようなメカニズムによって、一貫した行動を取ることで社会的信用を勝ち取るため、一貫性の原理が働くわけです。
3. 一貫したい欲を持つため
そもそも人間は、自分の行動・発言は「一貫したものとしたい」という欲求そのものを持っている生き物です。
そのため、自分が理想とするものとは違う行動、発言、考え、などを持ってしまうことを極端に嫌います。ゆえに、その欲に従わなければ気持ちが悪いため、一貫性の原理が働くと考えられています。
4. 認知的不協和を解消するため
認知的不協和とは、自分の認知と行動に矛盾が生じてしまい、その矛盾を解消しようとする心理現象です。
例えば「キャラ」というものがわかりやすいでしょう。人は、特定の場所や環境、コミュニティにおいて、自分のキャラ(一貫したもの)を持っていることがあります。
また、人はその「キャラ」というものを無意識に守っており、日々の言動を一貫しています。そのため、自分のキャラと沿わない言動(認知の矛盾=認知的不協和)を求められたとき、その行動を避けた結果、一貫性の原理が働くわけです。
このように、認知的不協和がおき、それを解消しようとすることで一貫した行動を取るようになるため、一貫性の原理が生じるわけです。
一貫性の原理が使用された具体例
街中で、あるアンケートに回答してもらいたく、一貫性の原理を利用していた例があります。アンケート回答では、普通に「回答してもらえませんか」と声をかけても、スルーされることは明白でした。
そのため、まずは「あなたは優しい方ですか?そうでない方ですか?」と声をかけてから、アンケートに答えてもらう方法とったそうです。
するとほとんどの人は「そうとう悪いことをしていない限り、悪人にはならないから」という理由で「どちらかと言うと優しい」と回答したといいます。
もちろん狙いは、「優しい」と回答させることにありました。つまり、いちど「優しい方だ」と言わせることで、その後の行動を優しい方へ促すことができたんですね。結果として、アンケートの回答率はあがったそうです。
このように、いちど発言してしまったことで、違う行動を取りづらくなるものが一貫性の原理です。
まとめ
一貫性の原理とは、人間が「自分の言動を一貫させたい」と思う心理傾向です。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。
本記事が、読者さんのお役に立てると幸いです。