YouTubeやVoicyにて、キングコング西野さんに取り上げられたことでも話題となった敵意帰属バイアス。
これは、認知バイアスという心理の一種であり、他者の言動を「敵意や悪意によるものだ」と思い込む傾向をさします。
この「敵意帰属バイアス」に陥ってしまったり、逆に陥らせてしまうことで、以下のような状況を引き起こすことがあります。
- 何気ない一言で、怒らせてしまった
- 相手の意見や説明を、嫌味に感じた
- 会話中、相手が不機嫌になってしまった
このように、日常では「無自覚・無意識」のうちに相手に敵意を与えてしまったり、自分が相手に敵意を感じてしまうことがありますよね。
そういった原因の大半は「敵意帰属バイアスによるもの」だと考えられますが、自分が陥ったり、相手に陥らせてしまうことで、人間関係を悪化さてしまったり、トラブルを引き起こしてしまう原因となってしまうこともあるでしょう。
そこで本記事では、敵意帰属バイアスの意味や原因・具体例などの詳細についてみていき、対処や改善をするには「どうすれば良いのか?」を紹介していきます。
キンコン西野さんが取り上げた敵意帰属バイアス(Ameba Blog)
敵意帰属バイアスとは

敵意帰属バイアスとは、他者の言動に対して「敵意・悪意があるものだ」と感じたり、そうであると思い込んでしまう心理現象です。自分や他者が意図して行ったか否か?は関係なく、受け取る側の一方的な解釈・捉え方(認知)に歪みが生じて起こります。
例:会話や議論などで意見を言った人に対して「否定したいだけでしょ」と強く思い込んだり、嫉妬心などから「嫌味や悪口が言いたいだけに違いない」などと、相手の言動が攻撃(単なる否定)に感じてしまうこと、そう思い込むことに該当する。
敵意帰属バイアスは、認知心理学における認知バイアス(アンコンシャス・バイアス)の一種で、1986年にDodge(ダッジ)氏によって提唱された「社会的情報処理モデル(符号化・解釈)」が元となった心理現象。(以降、1994年にCrick&Dodgeによって改訂され、現在は6つの情報処理段階があるとされています。)
このように、他者の言動に対して「根拠のないこと」でも、悪意や敵意に感じる心理を「敵意帰属バイアス」といいます。
敵意帰属バイアスが起こる原因

- 自己防衛:過去の経験
- 事故懸念や自己評価の低さ
- 感情や気分、当時の心の状態
- 固定概念・思い込み・認知の偏り
1. 自己防衛:過去の経験
人は過去の経験や育ちによる影響から、自分を守るために他者の言動に敵意を感じることで防御姿勢を取りやすくすると考えられています。
いじめや裏切り、強い否定など、対人関係でのつらい経験が多い人ほど、「また同じことが起こるかもしれない」と身構えやすくなります。
その結果、あいまいな場面でも「前も傷つけられたし、今回もきっとそうだ」と、相手に悪意を投影しやすくなります。特に子ども時代の体験は、その後の「世界は安全か危険か」という基本的な信念に影響すると言われています。
2. 自己概念や自己評価の低さ
自分に自信がなかったり、自己評価が低かったりすると、他者の行動や言葉を「自分に対する攻撃」と受け取りやすくなります。
自分に自信が持てず、「自分は好かれない」「役に立てていない」と感じていると、人のちょっとした行動も「自分を否定しているサイン」と解釈しがちです。
本当は中立的な出来事でも、「やっぱり自分は受け入れられていない」と感じやすくなります。「どうせ自分なんて」という自己イメージが強いほど、他者の行動をネガティブに読むレンズも濃くなります。
3. 感情や気分、当時の心の状態
怒り、不安、ストレスといったネガティブな感情状態にいるときには、敵意帰属バイアスが生じやすくなります。
ストレスや疲労も大きな要因です。心身が疲れていると、冷静に状況を考える余裕がなくなり、「単純で感情的な解釈」に流されやすくなります。
その結果、「わざとだ」「自分への攻撃だ」という思い込みが強まり、怒りや不安が増幅されてしまいます。寝不足のときや、多忙な時期ほど、人のちょっとした言動にイライラしやすいのは、このためです。
4. 固定概念・思い込み・認知の偏り
育ち(環境・経験など)からくる固定概念や思い込み。
これは「こうあるべき」や「常識」といったものに該当し、このような考え方によって敵意帰属バイアスが発動します。
例えば、道を歩くという行為だけでも「気配りのある(常識的な考えの)人」は、よく注意して歩いているでしょうし、それが当たり前で「皆そうするべきだ」と思い込んでいるでしょう。
しかし、そうでない考えの人も多く「ながらスマホ・不注意・横に並んで歩く」などの行為に及んでしまうことがあります。
これに対して「気配りある人」からすると、そんなことをするのは「わざとやってるに違いない」や「威張ってるに違いない」など、何らかの攻撃的な意図を感じてしまうことがあります。
そのため、敵意帰属バイアスが発動してトラブルの原因を作ってしまうわけです。このように、各々の「考え方(価値観)の違い」が常識や固定概念といった思い込みにあたり、両者がぶつかることによって敵意帰属バイアスは発動します。
具体例:過去の経験とトラウマ
過去に人から傷つけられた経験やトラウマ的な出来事があると、他人の行動に対する解釈が歪みやすくなるため、敵意帰属バイアスに陥りやすくなると考えられます。
例えば、過去にいじめを経験した人は、他者の無害な行動でさえも「自分をからかっているのではないか」「何か悪意があるのではないか」と感じやすくなります。
特に幼少期に大きなストレスや不安を経験した場合、人間関係において防御的なスタンスを取ることが多く、敵意帰属バイアスが強化されることもあるでしょう。
敵意帰属バイアスの事例・具体例

- 悪口を言われてる様に見える。
- 意見が、悪口や否定、攻撃に感じる
- キンコン西野の質問への攻撃(実話)
1. 悪口を言いわれてる様に見える。
画像のような場面で、「自分の悪口を言ってるに違いない」と自然に思い込み、トラブルに発展する事例は少なくないでしょう。
確かに、このような言動をみて「勘違いを起こしてしまう気持ち」になるのもわかりますが、誰にも聞かれたくない話題、恥ずかしいと思う話題、別の誰かの話題などで盛り上がっているだけという可能性もあります。
そういった根拠や確証もないことに対して「自分のことだ」と思い込んでしまうことが、敵意帰属バイアスの働いている状態だといえるでしょう。
2. 意見が、悪口や否定、攻撃に感じる。
他者の意見やアドバイス、説明などにイラッとしたり、悪意や攻撃に感じてしまうことはあるでしょう。この時、何らかの思い込みからその様に感じて、敵意帰属バイアスが発動している可能性があります。
また思い込みといっても様々で、人によっても異なります。例えば、相手が自分に対して、嫌味、小馬鹿、嫉妬などを抱き「攻撃しているに違いない」という思い込みかもしれませんし「それに近しい何か」かもしれません。
このように、単なる意見やアドバイスに対して「敵意を向けられている」と感じるのも、敵意帰属バイアスが発動している一例にあたります。
3. キンコン西野の質問への攻撃(実話)
ここでは、キンコン西野さんの質問に対しての攻撃について、実際にあった事例をみていきましょう。
事の発端は、「西野亮廣講演会」のポスターデザイン。
オンラインサロン内では、「ああした方が良かったね」「こうした意図は何?」というように、日々、議論が飛び交っているそう。その流れで起きたのが、ポスターに採用された表紙でした。実際の質問がこちら
西野さん:集客のことだけを考えたら、写真の方がいいと思うんだけど、イラストにしたのは何か意図があるんですかね?
それへの回答者:〇〇(画家)さんが描いた絵を悪く言うのはやめて欲しい!!
という返答が返ってきたそうです。
またその後、サロンメンバーや西野さんが「意図を知りたかっただけだよ」と何度説明しても「悪く言うな・ひどい!」という趣旨の返答一点張りで、話が平行線となり進まなくなるという事態へ向かったそうです。
そこへ終止符を打ったのが「ビリギャル」の作者でお馴染みの坪田先生。
「そんなこと言ってないじゃん!」という内容を曲解して「責められた・攻撃された」と思いがちな人は、理解力や説明不足が原因ではなく、【敵意帰属バイアス】が原因だったりします。
そう一言放つと、颯爽に消えていったそうです。
この話はここまでで「その後どうなったのか?」は、当時のサロンメンバーにしか知り得ないことです。
ともあれ、この質問が発端となり発動してしまった敵意帰属バイアス。
その紹介と、SNSでも似たような話は良くあるため「心においておくと良いですよね」というお話でした。
敵意帰属バイアスのセルフチェック

あなたが敵意帰属バイアスにどのくらい影響されているかをセルフチェックできるリストを用意しました。あてはまる項目が多いほど、このバイアスに要注意だと言えます。
- 人から返信が少し遅れるだけで、「嫌われたかも」と不安になることが多い。
- 相手の何気ない一言を、よく「自分をバカにしている」と受け取ってしまう。
- 「きっとわざとだ」「自分を困らせるためにやっている」と感じる場面がよくある。
- 一度「この人は自分の敵だ」と思うと、その人の行動すべてが悪意に見えてくる。
- 挨拶を返されなかったり目を合わせてもらえないと、即座に「嫌われている」と結論づけてしまう。
- 自分にとって大事な人ほど、「裏切られるかもしれない」と疑ってしまう。
- ささいな出来事でも、「また攻撃された」「また否定された」と感じて強く落ち込む。
- 本当は確認できるのに、相手の意図を確かめる前に「どうせこういうつもりだ」と決めつけることが多い。
- 不安や怒りを感じると、事実よりも「頭の中のストーリー」を優先してしまう。
- 後から振り返って「考えすぎだった」と気づくことが何度もある。
半分以上当てはまる場合、敵意帰属バイアスがあなたの対人ストレスを強めている可能性があります。大切なのは、「自分はダメだ」と責めることではなく、「自分にはこういうクセがあるんだな」と気づき、少しずつ扱い方を学んでいくことです。
必要に応じて、カウンセラーや信頼できる第三者に話を聞いてもらうのも、とても有効な方法です。
チェックリストを使うときのポイント
チェックリストを使うときのポイントは、「当てはまる=悪い人」という自己否定につなげないことです。むしろ、「こういう思考パターンがあるから、そりゃあしんどくなるよね」と、自分に共感するための材料として扱ってみてください。
そのうえで、「どの場面なら、もう少し柔らかい解釈を試せそうかな?」と、小さな一歩を探していくのがコツです。
例えば、10項目中8つ当てはまっていたとしても、いきなり全部を変える必要はありません。
「まずは、返信が少し遅れただけでは最悪の想像をしないようにしてみよう」「挨拶を返されなかったときは、相手の体調や状況の可能性も思い出してみよう」といったように、具体的な行動レベルに落とし込んでみましょう。
小さな成功体験が積み重なると、「自分は前よりも穏やかに人と関われている」という自信が育っていきます。
敵意帰属バイアスの対策・改善方法

認知バイアスの一種である「敵意帰属バイアス」は、常識がある種、偏った考え方であるように、誰にでも起こりうる心理現象です。
そのため、自分にも、相手にも、必ず陥る恐れがあり「相手への対策方法」や「自分が陥ってしまった時の改善方法」を理解しておくことが大切です。
敵意帰属バイアスに陥った相手への対策法
相手に「敵意帰属バイアス」が発動してしまったら、唯一の対策方法としてあげられるのは「それ以上、触れないこと」です。つまり、それ以上、相手に敵意を感じさせる行動を取らないことが、唯一の対策法となりえます。
なぜなら、敵意帰属バイアスが発動すると、どんなに説明をしても、どんなに誤解を解こうとしても、「相手は、その全てに対して攻撃と感じとってしまうから」です。
そのため、これ以上、攻撃の要因になる行動はせず、速やかに退却することが1番なのです。その後、落ち着いて話ができる機会に、言いたかったことを伝えるようにしましょう。
そうすることで、相手は話を聞いてくれる様になり、当時の誤解も解けるはずです。
敵意帰属バイアスに自分が陥った時の改善法
- 事実と解釈を分けてみる
- 別の可能性を意識的に探す
- 感情が高ぶった時は「すぐに反応しない」
- 事実を確認する勇気を持つ
- 情報との付き合い方を見直す
- 自己肯定感を少しずつ高める
敵意帰属バイアスは誰にでも起こりうるものですが、上記6つの工夫で弱めていくことができます。
1. 事実と解釈を分けてみる
「今、自分は相手の意図を勝手に決めつけていないか?」と自問する習慣を持つことです。事実と解釈を分けて考え、「実際に起きた行動」と「自分がそこに乗せている意味づけ」を紙に書き出してみると、思い込みに気づきやすくなります。
たとえば「挨拶を返されなかった」という事実と、「嫌われているに違いない」という解釈を分けて書いてみるだけでも、頭の中が整理されます。
2. 別の可能性を意識的に探す
「別の可能性」を意識的に探すことです。「無視された=嫌われている」ではなく、「聞こえなかった」「他のことで頭がいっぱいだった」「体調が悪かった」など、少なくとも3つは代わりの解釈を挙げてみましょう。
これは認知行動療法でもよく使われるテクニックで、思考の硬直をほぐすのに役立ちます。慣れてくると、「今もまた最悪のシナリオだけを選ぼうとしていないか?」と自分にツッコミを入れられるようになります。
3. 感情が高ぶったときは「すぐに反応しない」
感情が高ぶっているときは、すぐに反応しないことです。怒りや不安がピークのときにメッセージを送ったり、面と向かって詰め寄ると、後から後悔する展開になりがちです。
深呼吸をしたり、一晩寝かせてから考え直すことで、解釈が柔らかくなることは少なくありません。散歩をしたり、シャワーを浴びたり、身体をほぐすことも感情のクールダウンに効果的です。
4. 事実を確認する勇気を持つ
「事実を確認する勇気」を持つことです。「あのときこう感じたんだけど、あなたはどういうつもりだった?」と、できるだけ責めない言い方で相手に聞いてみると、意外な背景や事情が分かることがあります。
「あなたはわざと無視したよね?」ではなく、「私には少し寂しく感じられたんだけど、どうだった?」というように、自分の感情を主語にした表現(アイメッセージ)を使うと、相手も防衛的になりにくくなります。
5. 情報との付き合い方を見直す
情報との付き合い方を見直すことです。攻撃的なニュースや炎上ばかり見ていると、「人は基本的に怖い存在だ」という前提が強化されます。
意識的に、丁寧なコミュニケーションや助け合いのストーリーにも触れるようにすると、「世の中には敵意だけでなく、善意もたくさんある」という感覚が少しずつ取り戻されていきます。
6. 自己肯定感を少しずつ高める
自己肯定感を少しずつ高めることも重要です。「自分はダメだから嫌われる」という前提が弱まるほど、相手の言動を敵意として受け取りにくくなります。
小さな成功体験を振り返ったり、自分の良いところを書き出したり、信頼できる人からのポジティブなフィードバックを素直に受け取ることが助けになります。
完璧でなくても「それでも自分は大事な存在だ」と思えるようになるほど、世界の見え方も穏やかに変わっていきます。
まとめ
敵意帰属バイアスとは、他者の言動に対して「敵意・悪意がある」と思い込んでしまう心理現象。
そのため「相手への伝え方は注意すること」・「発動させてしまったら、そっとしておくこと」の2つを意識して、よい日常生活を送っていきましょう。
敵意帰属バイアスは、完全になくす必要はありません。むしろ、「もしかすると相手に悪意があるかもしれない」と感じられる感度は、身を守るために必要なこともあります。
ただし、それが常に最大音量で鳴り響いていると、守りたいはずの自分や大切な人間関係を傷つけてしまいます。
私たちができるのは、「敵意」を前提にするのではなく、「分からないからこそ、少し保留してみる」という選択肢を増やすことです。すぐに白黒つけず、「本当のところはどうなんだろう?」と一拍置く習慣は、自分の心を守りつつ、相手との対話の可能性も残してくれます。
ときどき立ち止まり、「本当にそうだろうか?」「別の見方はないだろうか?」と自分に問いかける習慣が、心を少しずつ軽くしてくれるはずです。
あなたの解釈が少しだけ優しくなることで、目の前の人との関係も、そして自分自身との関係も、今よりずっと生きやすいものに変わっていきます。
もしこの記事が、あなたの日常のどこかで「ちょっと待って、本当に相手は敵なのかな?」と立ち止まるきっかけになれば、とても嬉しく思います。
最後に、「相手に敵意があるかどうか」は、私たちには完全には分からない、という前提も大切です。だからこそ、自分の身を守りつつも、決めつけを少し緩めてみることが重要になります。
敵意帰属バイアスを理解し、自分の中の「敵探しレーダー」と上手につき合っていくことができれば、同じ出来事に出会っても、これまでとはまったく違う心の反応を選べるようになっていくでしょう。
その変化は、一気に訪れるわけではなく、日々の小さな選択の積み重ねとして、静かにしかし確実に形になっていきます。今日この瞬間から、「少しだけ優しい解釈を足してみる」という小さな実験を始めてみましょう。
のりそれでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。
本記事が、読者さんと、活動のお役に立てると幸いです。





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