正常性バイアスとは、危険が迫っているにもかかわらず「自分は大丈夫だ」と安心してしまう心理傾向。
近年、地震や災害を経験することが増え、「正常性バイアス」という言葉を耳にするようになった方も増えているのではないでしょうか。一方で、「正常性バイアスって何?」「なぜ、災害時に働くと危険なのか?」と疑問に思う方も多いはずです。
そのため、本記事では放っておくと危険な心理である「正常性バイアス」の意味や原因、災害時に働くと危険な理由などについて解説します。
正常性バイアスとは
正常性バイアスとは、人間が都合の悪い状況に陥ったさい、または予測不可能な事態が生じたときに「これは正常の状態である」といった過小評価(思い込み)をする心理現象。
例:災害や事故に遭遇したとき「自分は大丈夫だろう・周りも逃げてないし大丈夫だろう」というように「現在の出来事は、正常の状態だ」と思い込みをもつこと。このように、異常なことに対して「正常だ」と思い込んでしまう心理を「正常性バイアス」といいます。
また正常性バイアスは、別名「正常化の偏見・正常への傾向・日常性バイアス」とも呼ばれる認知バイアス(アンコンシャス・バイアス)の一種で「社会心理学・災害心理学・医療現場」などで使用される用語の1つです。
正常性バイアスが働く原因
正常性バイアスは、本来、こころの平穏を保つために備わっている防衛本能(自己防衛システム)です。日々、日常的に起こる出来事などから「不安やストレス」を感じ続けていては身が持ちません。そのため、人はこうしたストレスなどから身を守るために正常を保とうとするわけです。
したがって、日常生活でのストレスを防ぐという意味では、とても重要な役割を担うものでもあります。また、正常性バイアスは「人数が多いほど陥りやすい」という特徴をもっています。
ゆえに、3人以上ひとがいる空間では、周りをみて判断せず、状況をみて危機を回避することが大切となるでしょう。
正常性バイアスが災害時に危険な理由
ウイルス蔓延時、災害時、事故といった状況で、「大丈夫だ」と安心してると、目の前の危機から逃げることはできません。
しかし人間は、そういった状況下でこそ正常性バイアスが働く生き物です。そのため、実際に逃げ遅れるという事例も少なくありません。
ですから、災害時こそ、正常性バイアスが働くことは危険とされているのです。
では実際、どういった時に、どのような感じで、正常性バイアスは働くのでしょうか。
次からは、事例・具体例と共にみていきましょう。
正常性バイアスの事例・具体例
- 災害事例
- ウイルス事例
1. 災害事例
正常性バイアスに陥ることで、災害時、逃げ遅れてしまうことがあります。
例えば、東日本大震災。
地震後、遠くから津波がくるのを「ただ呆然とみていた」という人が、一定数いたと言われています。
この時、各々は正常性バイアスによって「堤防などの設備もあるし、大丈夫だろう」「周りも逃げていないし、大丈夫だろう」といった思い込みがあったのでしょう。
このように、津波などの災害時に「逃げ遅れの危険性」が伴うため、正常性バイアスには気をつける必要があります。
また、このような状況になった際は、積極的に自分から行動するよう心がけましょう。
その他の事例:「非常ベルがなったっ際」「豪雨などの災害の可能性がある時」
2. ウイルス事例
正常性バイアスが働くことで、ウイルス蔓延時の対策に不備がでたり、その影響で周りの反感をかうなど、安全性やトラブルでの危険性をまねくことがあります。
最近の例では、新型コロナウイルス。
コロナが流行り始めた頃、実際に↑2つの事例があり、ニュースにも取り上げられていました。
また、このような事態に陥った原因の1つとして、正常性バイアスが関係していると考えられます。
正常性バイアスの対策方法は?
- 訓練をおこなう
- ルールを作っておく
1. 訓練をおこなう
あらゆる状況を想定して、対処できるよう訓練しておくことが、正常性バイアスの対策として効果的です。
そもそも、正常性バイアスは無意識に働くもの。
そのため、予期せぬ状況に陥ったことを想定し訓練することで、意識せずとも対処できます。
したがって、「地震が起きたら〇〇する」「豪雨になったら〇〇する」など、最悪の自体を避けられる行動を訓練しておきましょう。
2. ルールを作っておく
すべてにおいて訓練しておくことは不可能です。
そのため、ここまできたら「どちらに転ぼうが、こうしよう」というルール(決まり事)を作っておくとで、正常性バイアス対策になります。
また、そうすることによって、無意識に心を落ち着かせようとしても「ルール上、こう動かなければ」と思い、行動へ移しやすくなるため訓練がなくても対処できます。
まとめ
正常性バイアスとは、危険が迫っているにもかかわらず「自分は大丈夫だ」と安心してしまう心理傾向。
そのため、人の無意識に働きかけ、身を守ろうとするものでもある反面、時には危険に追い込まれることもある危険な心理だということを肝に命じておきましょう。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。
本記事が、読者さんのお役に立てると幸いです。